血友病
血友病は遺伝性の血液凝固(出血した時に、血が止まりにくい・固まりにくい)障害で、止血に通常より時間がかかるために出血症状がみられます。血液凝固に必要なたん白がないか、または少ないために起こります。
正常な血液の固まり方
血友病の患者さんの血液の固まり方
血友病の患者さんの場合、図1、図2の2つの過程は一緒です。違いは、強力な「フィブリン凝塊」を十分に作ることができないことです。
血友病の患者さんが小さな切り傷や引っかき傷を作った時、通常は深刻な問題とはなりません。
しかし体の内部または外部により重症の傷を受けた時には、血管を修復するために十分強いフィブリン凝塊を作ることができません。
その時には治療が必要になります。つまり血友病のお子さんは止血するのに普通より長く時間がかかるのです。

【図1】
血管が収縮して血液が流れ出るのを防ぎます。


【図4】
凝固因子と「フィブリン」は、一時的な血小板血栓の上にフィブリン凝塊を形成して、より強力な、長持ちするばんそうこうを作ります。フィブリンは血小板同士をくっつけ、血小板を破損した血管にしっかりと固定します。このように血液中には重要な凝固因子がたくさんあります。
血友病のAとB
最も一般的な血友病のタイプは血友病Aと血友病Bです。
血友病Aの人は血液の「凝固因子」の中で、第VIII因子が低下しているか欠乏しています。
一方、血友病Bの人は第IX因子が低下しているか欠乏しています。
お子さんがどのタイプの血友病か知っておく必要があります。
血友病Aと血友病Bの治療薬は違うので、お子さんにとってどの治療薬(製剤)が必要なのかを知ることがとても重要です。
血友病の重症度
血友病の重症度は出血の回数や障害の程度で決まるものではありません。
血友病では、第VIII因子または第IX因子の働き(活性)がどの程度あるかを示す、「凝固因子レベル」によって重症度が決まります。
凝固因子レベルはパーセントで表示され、正常な凝固因子レベルは50〜150%です。
血友病患者さんの場合、凝固因子レベルは正常値よりずっと低くなります。
重症の血友病患者さんでは1%未満、中等症は1〜5%未満、軽症では5%以上と幅があります。
ご家族や患者さんは凝固因子レベルを知っておく必要があります。知らない場合は主治医に確認しておきましょう。
また凝固因子レベルは測定するたびに少しずつ違うことがあり、時に重症型に入ったり、時に中等症型に入ったりすることがあります。
低い方の値をお子さんの凝固因子レベルと考えておく方がよいでしょう。
表:血友病の重症度分類
重症度分類 | 凝固因子レベル(%) |
---|---|
重症型 | 1%未満 |
中等型 | 1〜5%未満 |
軽症型 | 5%以上 |
用語:
【静脈】血液を身体の組織から心臓に戻す血管。
【動脈】酸素を豊富に含んだ血液を心臓から身体の組織へ運ぶ血管。
【毛細血管】動脈の末端と静脈の末端を連絡する非常に細い血管。
【凝固】血液がゼリー状の物質に変わり、血管を修復すること。
【フィブリン凝塊】出血を止めるための凝塊。主にフィブリンからできています。
【血小板】血液凝固の過程で必要な小さく平らな細胞片です。
【血小板血栓】血管の穴に血小板が集まって形成される一時的なゆるい栓です。
【凝固因子】凝血塊を作るのに必要な血液中の様々なたん白です。第VIII因子や第IX因子もこの中に含まれます。
【フィブリン】たん白の糸で、凝血塊を形成するために血小板の栓の周りを編み込みます。
参考:
お子さんが血友病と診断されたご家族のために(小林正夫)