けがや出血をしたときの対応法

転んだ、切った、歯が抜けた
(切り傷、すり傷など)

ポイント

・切り傷・すり傷は、傷を洗ってから患部を圧迫して止血する

・鼻血は、ワセリンなどの軟膏をつけた綿球を十分に鼻に詰め込む

・出血が多いときは製剤を注射。状態に応じて救急病院で処置する

  • ※一般的な感染予防対策として、人の血液には直接触れないよう指導します。
  • ※救急病院に搬送する場合は、事前に血友病であることを伝えてください。

ちょっとした切り傷・すり傷

  • ①ハンカチなどで上から押さえます。

    ②保健室等で消毒して、止血するまで圧迫を続けます。

  • ③止血したら絆創膏を貼ります。

  • ④じわじわといつまでも出血が続く場合は、製剤を注射します。

    外傷出血の症状と出血時の補充療法について

鼻血

  • ①小鼻をしっかりつまんで保健室へ行きましょう。

    ②ワセリンなどの軟膏を塗った綿球やガーゼをしっかり鼻に詰めます(軟膏を塗っておけば、取り出すときにくっつかないので再出血を防止できます)。

    ③冷却剤などで鼻を少し冷やしながら、止血を待ちます。
    鼻血を繰り返す場合はトラネキサム酸という成分を含む薬剤の服用も効果的です(かさぶたが取れにくくなり、止血効果が得られます)。

    ④止血してもすぐに(数時間)は詰め物を取らないでください。

  • ⑤出血が続くようなら、製剤を注射します。

    鼻出血の症状と出血時の補充療法について

乳歯が抜けた

  • ①自然な抜歯なら、綿を噛んで圧迫し、止血を待ちます。

    ②アクシデントで抜けると出血が多めになるので、綿やガーゼなどを噛んで圧迫止血します。

  • ③出血が続くようなら、製剤を注射します。

    口腔内出血の症状と出血時の補充療法について

  • ※歯科治療・歯列矯正の注意
    歯科治療は比較的出血しやすい行為ですが、事前に製剤を注射すれば、普通と同じ治療をしてかまいません。血が出ない治療なら製剤も不要です。

からだをぶつけたとき
(皮下出血(打ち身など)
・捻挫・脱臼・骨折)

ポイント

・皮下出血(打ち身など)は患部の冷却が大切である

・捻挫や脱臼はまず冷却、症状が重ければ製剤を注射する

・骨折はなるべく早く製剤を注射し、患部を固定してすぐに病院へ行く

皮下出血(打ち身など)

  • 皮下出血の場合、押すと痛みますが、腕や足を動かしてもそれほど痛みがないことが多いです。
  • ①経過観察を行います。

    ②痛みや腫れが生じ、悪化するようなら、氷や冷却シートなどでの冷却や圧迫を行います。

  • ③ひどい打撲の場合や目の周りの出血などは、製剤を注射します。

    ④その後の経過を保護者と共に観察し、悪化しなければ特別な処置は必要ありません。

    皮下出血の症状と出血時の補充療法について

捻挫・脱臼

  • ①軽い捻挫や突き指は氷や冷却剤、冷却スプレーなどで患部を冷やし、経過観察をします。
    腫れや痛みが増すようであれば、製剤を注射します。

  • ②中程度以上の捻挫は氷や冷却剤で患部を冷やし、同時に製剤を注射します。
    患部はなるべく動かさないようにしましょう。
    突き指がひどい場合は、隣の指とテープで2カ所結んで固定すると楽になります。

    ③脱臼は極めてまれですが、すぐに整復できた場合は上記②に準じます。整復できない場合は、救急病院、またはかかりつけ病院に搬送します。

  • ※救急病院に製剤が準備されていないこともあります ので、搬送する前に必ず血友病であることを伝えてください。

骨折

  • ①添え木などで患部を固定すると同時に、製剤をなるべく早く注射します。

    ②校内での注射が間に合わない場合、搬送先の病院でなるべく早く注射しましょう。

    ③注射後は一般的な骨折後の処置と同じ医療行為を行います。

    ④ただし外科的な手術が必要な場合は、多めの製剤輸注が必要です。かかりつけの専門医に連絡をとり、指示を仰ぐようにしましょう。

    骨折の症状と出血時の補充療法について

  • ※救急病院に製剤が準備されていないこともありますので、必ず搬送する前に血友病であることを伝えてください。
  • 製剤の注射以外の応急手当て 「R・I・C・E」

頭部を打った場合(頭部打撲)

ポイント

・ぶつけても元気がある場合は慌てず経過観察する

・その後、頭痛や吐き気、ボーッとしているなど風邪のような症状を訴える場合は保護者に連絡の上、製剤を注射して経過観察する

・意識がないなどの症状がみられたら、救急病院、またはかかりつけ病院に搬送する

・24時間後まで注意して経過観察した上、さらに数日間は変調がないか様子を確認する


  • ①頭を打っても元気な場合は、まず経過観察をします。

    ②頭を打ったあと、気持ちが悪い、吐く、意識がぼんやりする、頭痛、発熱といった風邪のような症状を訴えた場合は、まず製剤を注射します。その後、保護者に連絡の上、経過観察します。

  • ③頭を打ったあと、意識がない、けいれんする、話せなくなる、激しい頭痛がする、手足がしびれる、いびきをかいて眠り、その後起きないといった症状がみられたら、救急病院か、かかりつけ病院に搬送します。救急病院には製剤が準備されていないこともありますので、搬送する前に血友病であることを必ず伝えてください。

    ④経過観察はしばらく続けます。その時点で無症状であっても、頭の中でじわじわと出血が続き、数日後に悪化することもあります。これは血友病に特徴的な頭蓋内出血で、症状はゆるやかに進行しますので、慌てず病院を受診すれば大丈夫です。

    乳幼児の頭部打撲の症状と出血時の補充療法について

ひざ・足首が痛い、
手足が伸びない、歩けない
(関節内出血・筋肉内出血)

ポイント

・関節内出血はひざ・足首・ひじなどの関節部の出血のことである→患部を動かすと痛い、かばって歩くなど動作がおかしくなる

・関節内出血は繰り返しやすいので、前に痛めた場所は注意が必要である

・筋肉内出血はふくらはぎ・大腿・腕などさまざまである→曲げ伸ばしたり触られたりすると痛い、歩き方や動作がおかしくなる

・時間がたつと腫れ・熱感などの症状も出現、痛みが増強する

・症状がみられたら、早めの製剤注射と「R・I・C・E」で止血する

  • ※小学校高学年以上では自分で判断できる生徒が多い
  • ①歩き方や動作が変化した場合
    本人に痛みを確認の上、経過観察します。

    ②痛みや違和感がある場合
    本人に製剤注射の必要を確認。必要なら注射を打ちます。さらに保護者に連絡をして冷却しましょう。授業を受けるかどうかは本人の判断にゆだねましょう。

  • ③強い痛みや腫れが出る場合
    製剤を注射し、冷却しながら安静にします。腸腰筋出血は重症ですが、腫れがわからず、うまく歩けなくなり、横になっても足が伸ばせない場合は注意が必要です。
    本人の判断で保護者の迎えを依頼するかどうか決めた上、連絡をとりましょう。

    関節内出血の症状と出血時の補充療法について

    筋肉内出血の症状と出血時の補充療法について

  • ※以前に関節内出血したところは血管が弱くなって繰り返しやすくなります。関節内出血を繰り返すと徐々に動く範囲が狭く、動きづらくなります。 ※その反面、うまく治療が進むと劇的に痛みが引きます。低学年では安静を忘れることがありますので、再出血させないように注意してください。またこうした変化にほかの生徒が不信感を抱くこともありますので、症状だけでも事前に説明しておくことが、理解してもらう上で大切です。
参考:
  • 学校の先生のための血友病ケアノート(監修 医療法人財団 荻窪病院 花房 秀次 小島 賢一)