患者さんと
ご家族へのインタビュー
〜血友病と生きる
私たちのいろんな気持ち〜

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INTERVIEW

医療現場での仕事はハード、でも普通のことはしたくなかった
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勤務先である病院の屋上にて、休憩時間に後輩と話す野崎さん。仕事仲間とのコミュニケーションを大切にし、ランチも必ずスタッフと食べられるそうです。
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野崎暢仁さん
京都府在住
臨床工学技士

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1977 年生まれ。心臓を専門とする臨床工学技士として医療機関に勤務。
日本心血管インターベンション治療学会所属。
常に笑顔。それが野崎暢仁さんの第一印象でした。病院でキリッと働く姿にも、同僚や患者さんから声をかけられる姿にも、後輩と談笑している姿にも共通していたのは、頼もしさが溢れていること。野崎さんが今の進路を選ばれた背景や、大切にされていること、そして他の患者さんへのメッセージなどをうかがいました。
人とは違う、変わったことをするのが好き。
両親や友達のおかげで、伸び伸びと育った。
僕は2 歳のときから病院に通っているのですが、病気だと意識したことが全くないんです。これは、両親や友達のおかげ。両親から「病気だから○○なんだ」などと言われた記憶がありません。いつも「あんたは、あんたなんやから」と母親から言われていましたね。もちろん、人との違いを感じたり、体育の時など自分だけ違うことをしたりしたシーンはありました。でも、それだからといって「“制限” された」とか「傷ついた」とか思った記憶はないです。周囲からも「お前は病気だから」などと言われたことはありません。伸び伸びと自由に育ててもらったのでしょう。「人と同じことをするのは嫌。」と考えるようになりました。それで、進路を考えたとき、当時まだ新しい免許の一つだった臨床工学技士に惹かれたんです。日頃から身近な存在だった医療従事者になりたい、と考えたのは自然なことでもありました。
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臨床工学技士の野崎さんは、心臓カテーテル検査などの循環器系を専門にされています。
決して活発で目立つタイプではなかった僕が
大勢の前で話すまでになった。
僕は決して活発で目立つタイプではなかったんですよ。そういう自分が変わり始めたのは、仕事を始めてからです。いろいろな人と話せるようになりました。特に大きかったのは、ある上司との出会い。当時の私は、臨床工学技士はあくまでドクターの“手伝い” と考えていたのですが、その上司の仕事ぶりに「僕は間違っている」と気づかされました。
僕たち医療スタッフはそれぞれの立場から専門知識や技術を提供し合い、それらを総合して患者さんに医療を提供しなくてはいけません。それが本当の「チーム医療」なのだと、分かったのです。
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学生時代からこの検査着に憧れていたという野崎さん。努力の末に夢を叶え、生き生きと働かれている今、「今後も医療現場に貢献していきたい」と話されます。
その上司は僕の病気のことを知っている数少ない人の一人でした。よく相談にものってくれたんです。今、病院での業務以外に、講演活動をしているのですが、始めたきっかけはその上司が薦めてくれたからなんです。こうして、おとなしかった僕が大勢の前で話すまでになっていきました。
常に全力で、何をするのでもベストを尽くす。
病気を「できない理由」にはしたくない。
今も、楽しく仕事をさせていただいていますよ。当直の仕事が週に2〜3 回ありますが、動き回っているのが好きなので、ちっとも苦ではありません。車が趣味なので、休日もどこかに出かけています。愛車でドライブをして、大好きなラーメンを食べるのが至福の時間です(笑)。
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こだわりの愛車、Jeep の前で。「人と違ったことをするのが好き」と話す野崎さんらしく、珍しいカラーの車を探されたのだそうです。
これだけハードに働いていても、不安になったことはないんです。常に全力で、何をするのでもベストを尽くしたい。単純に負けず嫌いなんですよね。もちろん血友病のことは頭にありますが、それを「できない理由」にしたくないんです。僕は僕やし、「病気だからこれをしたらあかん」とは考えたくない。人によって、その人らしさは色々なのでしょうね。
数多くの医療スタッフから愛情を受けて育ってきた。
今度は、僕がそれを返していきたい。
定期補充療法を始めたのは高校生からです。注射さえしていれば何ともないだけに、つい注射を先延ばしにして出血し、痛い目にあったこともあります。なので、「これ以上歩いたらやばいぞ」「今なら大丈夫」と分かるんです。仕事中に注射して現場へ戻ることもあります。いつでも自分のタイミングでできるのは、自己注射のメリットですよね。
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オンとオフをしっかり切り替え、オフ時には同僚や部下と話していても仕事の話をしないよう心がけているそうです。
職場では、患者さんとも積極的にコミュニケーションをとることを心がけています。その根本にはやはり「自分も患者だ」という考えがありますね。僕も数多くの医療スタッフから愛情を受けて育ってきましたから。今度は、僕がそれを返していきたいですね。血友病は僕にとって、パートナー。一体のものなんですよ。注射しなかったら怒らせてしまうし、普通に仲良くしていれば何ともない。僕の中にいる、もう一人の自分なのだと思います。無理をせずに自分らしく生きることを教えてくれた、僕の“相棒” です。

取材後記

ファッションも車も、おしゃれで爽やかな野崎さん。ご両親やこれまでに出会った上司のことを語るときには、冗談を交えながらも、周囲の方々への感謝の気持ちが言葉の端々から溢れていました。いつも前向きな野崎さんの素敵なお話、有難うございました。
写真:橋本裕貴 文:小久保よしの
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