患者さんと
ご家族へのインタビュー
〜血友病と生きる
私たちのいろんな気持ち〜

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INTERVIEW

病気は資質や個性と同じ
大事なのは自分を信じ、好きに生きていくこと
interview
行きつけの楽器店でスタッフと話される鈴木さん。「話が盛り上がって、長時間滞在することもあります」とのことです。
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鈴木幸一さん
東京都在住
デジタルコンテンツ
クリエイター

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1972年生まれ。ゲームクリエイターとして活動後、携帯コンテンツ、映像編集に関わる。
現在は、企業のPRツールなどデジタルメディア全般を制作。
都内にある顔なじみの楽器店で、新商品を触りながらスタッフと談笑される鈴木幸一さん。 うかがうと、仕事で映像編集をする際に、自ら制作した音楽をつけることもあり、そのスキルは独学や仕事現場で体得されたそうです。 鈴木さんに、クリエイティブな仕事への想いや血友病患者さんへのメッセージなどをうかがいました。
主治医の先生のおかげで、パソコンのおもしろさを覚え
病院へ行くのが楽しくなりました
私はデジタルコンテンツクリエイターという仕事をしています。この世界に魅せられた最初のきっかけは、小学3年のときに触れたパソコンでした。パソコンの原点とも言われているモデルで、日本製だったんです。特にハマったのが、ゲームです。
私の主治医だった先生も非常にパソコンが好きで、医局にパソコンを置いていたほどでした。その先生は私がパソコンに興味を持っていることを知り、プログラムなどを教えてくれたんです。
それ以来、病院へ行くのが楽しくなりました。外来に行くたびに先生が私の作ったプログラムを採点してくれたり、海外の情報を教えてくれたりするんです。そうやって、自分でプログラムを作ることの喜びをおぼえていきました。
一方で、1983年の小学4年のときに自己注射を始めました。止血をコントロールできるようになり、生活が一変しましたね。そのままパソコンの世界に没頭しました。
後から聞いた話ですが、先生は私の将来の仕事を案じて教えてくれていたそうです。
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独学で覚えたデジタル音楽の知識やスキル。映像につける音楽を自ら制作することもあるそうです。自宅にはシンセサイザーが数台あるとのこと。
仕事仲間には、病気のことを話し、
どう手伝ってもらえると助かるのか、伝えています
今思えば、私は「自分を認めてほしい」という気持ちが強かったのでしょう。その気持ちが「努力するのは楽しい」というスタイルへとつながり、高校1年のときに企業へ持ち込みをして、2年の時にゲームシナリオライターとしてデビューしました。
こうして新しいゲーム機を出すプロジェクトに関わったところ、「新しいものができあがっていく瞬間に立ち会えるのはおもしろい!」と感じ、卒業後に就職しました。

体のことも考えて、自宅でもできる仕事を選んできました。
仕事仲間には、病気のことを話しています。支障が出る可能性を予め伝えておけば、理解を得やすいのです。疲労がたまると出血のリスクが上がる、と心得ている人からは、「この姿勢なら大丈夫ですか?」「今日は自宅作業でいいですよ」などとサポートしてもらっています。
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よく仕事や打ち合わせをするというカフェにて。体への負担を減らすよう、タブレット機器などを持ち歩き、駆使して仕事をされています。
人は一人で生きていけない
だからこそ、「仲間」を増やしたほうがいい
病気に関係なく言えることですが、人は一人で生きていけないんですよね。「誰か何とかして」「察して」と思うのではなくて、どう手伝ってもらえると自分が助かるのか、伝えていくほうがいいと、私は思います。だからこそ、「仲間」を増やしたほうがいいと思います。

病院の先生や看護士さんも「仲間」。顔見知りになって、まるで学校に行くかのように病院に行く、そういう関係性を病院と築けるといいですね。先生方は体や治療についてのプロフェッショナルなわけですから「今、体がそうなっているのは○○だからだよ」と言ってもらえれば、一人で悩んでいるよりもすぐに正解にたどりつけます。
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楽器店で新商品をチェックする鈴木さん。「音楽機材が大好きなので、ここにいると時間が経つことを忘れてしまいます」と話されます。
血友病は自分の一部
大事なのは、それを活かして何ができるか
そうしたことを考えるきっかけがあったから、血友病を自分の一部として思えるようになりました。大事なのは、それを活かして何ができるか、です。
以前は、血友病患者が暮らしていくうえで、気をつけなければならないことが、たくさんありました。しかし、医療の進歩のおかげで、大きく状況は変わっています。同じ病気の患者さんには「未来は明るいので、好きに生きていきましょう」と伝えたいです。

「もしかしたらダメなんじゃないか」とは考えないこと。「これがいいだろう」「今日は頑張ったぞ」と自分を認めていけばいいんです。自分を信じて、進んでいきましょう。
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ファッションにもご自分のスタイルをお持ちの鈴木さん。特に好きなのは帽子だそうです。

取材後記

子どもの頃から身につけたパソコンのスキルを生かし、長年フリーランスで活動されている鈴木さん。 お仲間と共に、ご自身ならではの感性を活かしてご活躍される鈴木さんの力強いお気持ちは、「好きに生きていきましょう」という言葉に表れていました。 有難うございました。
写真:橋本裕貴 文:小久保よしの
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