血友病患者さんの歯科治療

お子さんの歯に十分気を付けることは、出血の予防につながるので非常に大切です。虫歯予防のため、哺乳瓶を長く使用したり、赤ちゃんの時からジュースやイオン飲料を飲む習慣をつけないようにしてください。乳歯は6歳から12歳くらいにかけて生えかわりますが、抜けた時にもたいていすぐに止血することが多いです。歯が生え始めたら、小児歯科の受診をお勧めします。適切な歯科治療と定期検診がとても重要です。詳しくは主治医か血友病治療施設にご連絡ください。

歯が生え変わる時に出血したら…

  • 綿ガーゼを丸めて噛ませてください。
  • ブクブクうがいをさせないようにしてください。
  • 2、3日の間、柔らかいものだけ食べさせてください。
  • 2時間以上出血が止まらない時は凝固因子の補充が必要な時があります。
  • 主治医や血友病治療施設にアドバイスを求めてください。

参考:
お子さんが血友病と診断されたご家族のために(小林正夫)(バクスター)

Q&A

歯医者さんにどのように血友病のことを伝えればいいでしょうか?

荻窪病院の臨床心理士 小島賢一先生からのメッセージです。

歯医者さんに血友病のことをお話し、事情を知ってもらって、治療していただくのが一番安心です。しかし血友病のことを十分理解している歯医者さんは正直少なく、やみくもに不安がられ、拒否されることがあります。このへんのことを皆さん、何となく感じていらっしゃるから歯医者さんにどう伝えるか、悩むのです。まず考えるべきことは伝えるか、伝えないかです。医療者としてはここで「伝えるべき」と書かねばいけないのかもしれませんが、現実はそう杓子定規【しゃくしじょうぎ】には決められません。地域が狭く、近所付き合いが濃密な中で、(例外はありますが)遺伝的な疾患である血友病を知られると姉妹の結婚にも影響するのではないかと思っている家族には、近所の歯医者さんにも知られたくないと考えるかもしれませんし、血友病とはいっても凝固因子製剤を使ったこともないような軽症の人もいるでしょう。
伝えないことを選ぶ場合は、主治医に相談して歯科の措置の場合、自分たちはどの程度の準備をしたらよいか尋ねてみましょう。もし家庭治療ができて、製剤を事前にうっていけば大丈夫と言われたら、毎回、歯医者さんに行く30分前に製剤を投与し、がんばって通いましょう。もちろん途中で不具合があれば、すぐに主治医の先生に相談してくださいね。
さて伝えておきたいという場合です。主治医の先生に紹介してもらうのが最も安全・確実ですが、そこが通いにくいこともあります。ターゲットとなる歯科医院が決まったら、お子さんなら先に親や兄弟姉妹の治療や歯の健康診断に行ったり、お母さん仲間の評判を訊いたり、情報を収集します。そして感触が良ければ、まず通って顔馴染みになる努力をします。人間、顔馴染みのお願いの方が断りにくいものです。次に主治医の先生に歯科医さんからの血友病についての問い合わせに答えてくださいとお願いしておきます。ここまでが事前準備。具体的な話は血友病であること、血が止まりにくいだけなので、抜歯などの前に凝固因子製剤をうつとか、治療後に止血剤を服用するといった程度に過ぎず、それ以上の特別な用心は要らないことを伝えます。説明用の冊子を病院から入手して用意しておく、あるいはここのwebsiteを紹介するのも手です。その上で「親の説明で不安なら専門医に話してもらえるようにしてありますし、紹介状ももらってきますから」とお願いしてみてはどうでしょう。お気持ちのある先生であれば、このあたりで対応してくれますし、ここで難色を示すようなら無理をされず、別の歯科医院にトライした方がよいかもしれません。

最後にひとつだけ。伝えても伝えなくても、一部に血液凝固を妨げる成分の入った消炎剤・鎮痛剤がありますので、これについては先に主治医の先生から入手するか、歯医者さんでもらった薬が大丈夫か主治医に尋ねるなりしてから使用するようにしてください。

歯医者さんで治療にかかる前に血液凝固因子製剤をどのくらい投与すべきでしょうか?

荻窪病院 小児科・血液科 花房秀次先生からのメッセージです。

抜歯や切開を行う場合は小手術と考え、処置に応じてピーク因子レベルの目標を20〜80%として製剤を処置前と処置後12〜24時間ごとに1〜3日間投与する必要があります。多くの場合は、60%程度あれば十分ですが、親知らずなどで抜歯が困難な場合は80%近い投与が必要なこともありますし、逆に簡単な抜歯の場合は20%程度でも大丈夫なこともあります。
また、通常抜歯前と抜歯後の夜、翌朝の3回投与すると良いでしょう。その後は、出血するようであれば1日1回製剤投与すれば良いと思います。

むし歯・歯周病治療や歯石の除去などで歯肉の出血が予想される場合は処置前に20〜40%程度の量を投与すれば出血が予防できますし、安心して処置が受けられるでしょう。

実際に受ける診療内容が明らかな場合には、血友病の先生に相談するか歯医者さんへ直接お話してもらうなどし、安心して適切な処置を受けられるようにしましょう。

一般的に歯ぐきからの止血にはトラネキサム酸が用いられていますが、血液凝固因子製剤と一緒には使えますか?

荻窪病院 小児科・血液科 花房秀次先生からのメッセージです。

トラネキサム酸は口腔内の出血や鼻血など粘膜出血の再発防止にとても有効です。製剤を投与して止血し、かさぶたができますが、トラネキサム酸にはかさぶたが取れにくくする作用があり、長く圧迫止血しているのと似た働きがあります。したがって、血液凝固因子製剤と一緒に使うことによって効果が高まります。

尚、血友病インヒビターを持つ方に使用するインヒビター治療薬とトラネキサム酸の併用には少し注意が必要ですが、その他の製剤で併用する場合は問題ありません。