患者さんとご家族へのインタビュー

〜血友病と生きる私たちのいろんな気持ち〜

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INTERVIEW

やりたいことをやっている父親のほうがかっこいい
MBAを取得して、いろいろなコトにチャレンジ
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自宅近くの河原で、息子さんと愛犬と一緒に休日の一時を楽しまれる梅原さん。
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梅原昌宏さん
東京都在住
薬剤師

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調剤薬局にて管理薬剤師を歴任後、2010年、英国国立大学ウェールズ大学(東京校)にてMBAを取得。2014年にくぬぎだ薬局を設立し、現在に至る。
薬局のオーナー、薬剤師、NPO代表、そして一家の主として、多忙な日々を送る梅原昌宏さん。 そんな慌ただしさをまったく感じさせず、丁寧に言葉を紡ぐその姿は、梅原さんの真摯な生き方を物語っているかのようでした。 休日の昼下がり、都内郊外の自宅にて家族と愛犬とともに、これまでのこと、そしてこれからのことについて、梅原さんにお話をうかがいました。
成功しても失敗してもやりたいことをやる
薬局を引き継ぎ、経営者に
薬剤師として働き始めてから、もう15年ほど経ちますね。一時期、このまま薬剤師として頑張るべきか、思い切って外の世界に飛び出すか迷っていました。ちょうど子どもが生まれたこともあって悩みましたが、成功しても失敗してもやりたいことをやっている父親のほうがかっこいいじゃないか……。そう考えた末、MBAを取ろうと決め、2008年に仕事をいったん辞めました。

2010年にMBAを取得してからは、いろいろな仕事にチャレンジしました。けれど軌道に乗らず落ち込んで、ぽろっと「安定した社員に戻ろうかな。」と妻に言ったんです。そうしたら、「絶対に許さないからね」と、ビシっと言われて(笑)。「育児がいちばん大変な時に、学業の邪魔をしないように私も頑張ったんだから、これくらいのことで諦めるなんて許さないから。」と。その後、2014年に以前勤めていた薬局を引き継ぐ形で、経営者になりました。
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「薬をお渡しするだけではなく、患者さんの健康を根本からサポートしたい」と語る梅原さん。
風邪を引いたくらいの感覚で
血友病はいつか治るだろうと思っていた
自分の病気を意識し始めたのは、小学校2年生くらいですかね。母親から「ちょっと話がある」と言われ、「あなたはこういう病気です」と告げられたときは、風邪を引いたくらいの感覚しかありませんでした。いつかは治るんだろうと。

鮮明に覚えていることがあります。小学生のとき、体育の授業を見学していたら、先生が「今日は運動公園まで走って行くぞ」と言い残して、他の生徒と一緒に校庭からいなくなってしまったんです。僕は1時間ほどひとり校庭で待っていましたが、先生は、僕のことを忘れていたようです。当時は、通院などで学校を休むことがちょくちょくあって、それでも授業は行われている……。僕がいなくても世の中は回るんじゃないか。そう思った時期もありました。
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従業員5名を抱え、経営者としての仕事にも追われる日々を送られています。
誰かの役に立てることが大きな喜びに
寂しい思いをしている子どもたちの夢を叶えたい
幸い友達に恵まれ、足が痛いときはおぶって帰ってくれたり、よく助けてもらったりしました。その優しさは嬉しかったけれど、助けられてばかりだと自分の存在意義を感じられないんです。けれど、社会に出て「ありがとう」と言われる機会が増えて、そのひと言が嬉しかった。それが、自信をつかむきっかけにもなったんです。

そういった体験から、ハンディキャップのある子どもたちを支援する活動をしたいと思うようになりました。かつての自分のように、寂しい思いをしている子どもたちが自信をつかんでくれたらいいな、と。2014年に「ドリームリンクス」というNPOを立ち上げ、今は子どもたちの夢を叶える新たな活動も計画しているところです。
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たくさんの人に助けられた分、自分も何か世の中に残したい
私はつい最近まで、同じ血友病患者の方と関わりを持とうとしていませんでした。本当の意味で、病気を受け入れていなかったのでしょうね。けれど、最近は、自分のベースを作ってくれたのは血友病なんだなと実感することが増えてきました。病気を受け入れてからは同じ病気の友人も増え、人生の幅が広がっているように思います。
病気であろうがなかろうが、人はいつ何があるかわかりませんよね。だから、自分も何か世の中に残せるものがあるといいなと思っています。
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「仕事やNPOの活動に励めるのは、妻や息子の協力があってこそですね」。

取材後記

梅原さんは、頼りになるお兄さんのような雰囲気をお持ちで、薬局の従業員、NPOのメンバーや子どもたちからも、広く慕われていることが想像できました。 自分の身に起きたすべてのことを人生の糧にし、全力で生きてこられた梅原さん。 それゆえの揺るぎないたくましさ、そして優しさを、言葉の端々から感じとることができたインタビューでした。 有難うございました。
写真:橋本裕貴 文:孫奈美
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