学校生活の中で

あと何年か先のことでも、あなたはお子さんが小学校に通うようになることを不安に感じているかもしれません。しかし、普通の学校に行き、他の子どもと一緒に生活することでお子さんは多くのことを学び、普通の生活を送ることができるのです。

学校とうまく付き合うために

  • お子さんの担任の先生、校長先生、保健の先生、そして体育の先生に面会し血友病に対する理解を深めてもらうことが必要です。血友病であることやその治療、お子さんができること、できないことについて話し合ってください。
  • 学校での出血にどう対応したらよいか先生方とあらかじめ決めておきましょう。
  • 緊急処置のしかたは他のお子さんに対するのと同じでも、頭、首、のど、あるいは腹部に外傷がある場合はすぐにご家族に連絡することを必ず守っていただいてください。
  • 学校の先生方と話してもらえるよう主治医の先生に相談してみましょう。

おすすめのスポーツ

人にもよりますが、小学校では縄跳びやマラソン、中学では柔道や剣道などは出血しやすい種目です。水泳は関節への負担が少なく、お勧めスポーツです。なお、柔道では受身の練習、剣道では型の練習程度であれば問題はありませんが、それ以上の訓練は、お子さんそれぞれの状態によって判断する必要があるでしょう。

自己注射導入のコツあれこれ

今は自己注射を当たり前のようにしている方でも、自己注射に向けて親御さんが動機づけに苦労していた例は結構あります。治療とはいえ、痛い注射をするように、どのように動機づけていったのでしょうか。多くの患者さんのお話をお聴きした中で、いくつかの工夫がありました。

突然は無理

注射に限らず、突然、何か言われても心の準備がないと取りかかれないものです。分かっても、分からなくても、小さいうちから大きくなったら自分でするものだと言い聞かせておきましょう。後述するような時期の目安を伝えた方が、心の準備はしやすいものです。また観察学習も有効で、キャンプなどで、お兄さんがやっている姿を見ると自然に自分もあの年になったらやるものだという覚悟ができてきます。但し、いずれもあまりプレッシャーにならない程度にお願いしますね。

一人は無理

普段の遊び友だちや同級生に同じ血友病仲間がいることは99%あり得ません。そんな中で自分だけが注射の練習をしなくてはならないのですから、乗り気にならないのが普通です。その点で仲間を作っておくことは大切で、この時までに患者会行事などに参加して同年代の仲間と知り合いになっておきましょう。珍しい病気だけれど決して一人ではないと知っていると孤独感は大いに緩和されます。輸注訓練もキャンプなどで知り合った同世代の友人と一緒にできれば、不安は大幅に解消されるでしょう。

全部は無理

輸注量を判断して、衛生管理をしつつ、溶解操作をし、注射をし、片付ける。この全てを一度に学習・習得しようとしても、とても大変。親御さんが一緒になって、できるところから予習をしておきましょう。まずテーブルを拭き、卓上を片付けてセットを準備させます。次に溶解操作を教えて一人でも溶かせるように慣れてもらいます。そして、片付け。プラスチックゴミ、医療廃棄物、紙のゴミなどに分けて、捨てることを憶えます。特に片付けは、自分の血液を他者に触れさせない、という感染管理の基本的かつ重要な内容で、こうした手続きを経て体験的に学習していくとよいでしょう。それらと並行して、予測される出血の状況と必要輸注量の計算ができるようにしておくことも忘れてはいけません。簡単ですが、掛け算や割り算は必須ですよ。自己注射のテキストは、病院の主治医の先生に言えばもらえます。

ぼんやりは無理

できるようになった人は、口を揃えて楽になったと言います。しかし、やっていない人にはピンと来ません。特に小学生は親がいつもそばにいて駆けつけて注射してくれるものですから、そのままで良いと考えることも多いようです。自己注射ができたら生活や気持ちがどう変わるかを想像させましょう。親の帰宅を待たずにうてる、ちょっと怪しいと思えばうてる、学校に製剤が置いてあれば学校でもうてるといった具合。しかし、最も効果的なのは学校行事への単独参加です。修学旅行、林間・臨海学校、移動教室、宿泊遠足、社会科見学などの校外行事に他の子と同様、一人で参加できるようになります。親が付いてくるのが恥ずかしくなる思春期の男の子にとっては大きな動機になります。

焦ると無理

一般的に、新婚旅行に注射器を持った母親が一緒に付いて行った例はありません。必要のある人は必ず覚えます。最初に決めた時期が失敗しても焦らずに、再チャレンジしてください。

練習を手伝う側として

何人かで輸注練習するやり方はいいですね。隣を見て自分も頑張らなくちゃって思う子もいるし、何より入院と針を刺す不安が、友だちと一緒にいることで軽くなる気がします。ただ子どもによっては、針を刺す実習の時に怖くて泣きだす、あるいは友だちがみている緊張感で失敗して落ち込む子もいますので、個別に練習させる方がよい場合もあります。様子をみて決めるようにしています。また本人がやっている時は母親には外に出てもらっています。親も心配でしょうし、子どものおぼつかない手つきを見ていると口も手も出したくなるでしょう。子どもも、つい母親の方を見ては同意や助けを求めてしまうでしょう。親子の絆は大切ですが、自己注射は子どもの自立への一歩でもあります。

参考: