気持ちの受け入れ方
心構え
他人がお子さんを“血が止まらない病気の子”と呼んだとしても、お子さんは、たまたま血友病と呼ばれる状態を持つことになった一人の人間です。病気が彼の全存在ではありません。多くの親は“完璧に健康な子ども”を望みますが、現実にはそんな子どもはいません。子どもの多くに、アレルギーや糖尿病があったり、視力が悪かったり、あるいはまた別の医療的な問題があるのです。そして、血友病であるということは、お子さんが充実した人生を送れないということではありません。幸福で充実した人生を送ることができるかどうかは、お子さんが本来持っている能力の中にあります。血友病治療も進歩していますから、凝固因子が確実に補充されていれば、お子さんは普通のお子さんと同じだと考えてください。
困った時はどうするか?
困った時の対処法は人によって異なります。家族、祖父母、親戚、または近所の方やご友人などに相談される方が多いと思います。特に、核家族の場合は、夜間に病院に行く時にどう対応するかなどについて、あらかじめ話し合っておくとよいでしょう。最近では、親族と離れて暮らしている場合も多く、そのような場合に頼りになるのはとなり近所の方かもしれません。また、医学的なこと、子育てに関することについては、病院の看護師や主治医のほか、病院のソーシャルワーカーや地域の保健所。保健センターの保健師など、下記に挙げた方と相談できます。困った時は一人で抱え込まず、身近な人に声をかけてみてください。日頃から信頼して話ができる人や、頼れる関係を作っておくのも大切と考えれられます。
- 病院の看護師、主治医
- 病院のソーシャルワーカー(もしもいない場合には、日本ソーシャルワーカー協会に問い合わせをして、近隣のソーシャルワーカーを紹介してもらいましょう)
- 地域の保健所・保健センター、病院の保健師
- ボランティア(地域の社会福祉協議会やNPO相談センターに相談してみましょう)
- 近くに住む友の会会員(近くに友の会がない場合は、遠方の友の会に連絡をとってみる、または看護師などから血友病のお子さんを育てた経験のある方を紹介してもらいましょう)
- 血友病患者さんのウェブサイト
困った時の相談先
医療ソーシャルワーカーについて
近年、医療機関には、病院の方を専門とした福祉の相談員を置くところも増えてきました。その福祉の相談員のことを、医療ソーシャルワーカー(MSW)といいます。医療ソーシャルワーカーは、血友病に関わる医療費の助成や福祉制度、患者会など、社会福祉に関する多くの情報を持っています。初めて医療機関を受診する時や分からないことなどがあれば、いつでも相談に行ってみてください。医療ソーシャルワーカーがどこにいるか分からない時は、主治医や看護師など病院のスタッフに遠慮なく聞いてみましょう。
血友病治療施設について
主治医と密に連絡を取るようにしましょう。地域によっては、専門の包括治療体制を整えている血友病治療施設があります。血友病の人々に「包括医療※」を提供できるようスタッフが配置され、お子さんの人生の各ステージで手助けをしてくれます。血友病治療施設のスタッフには通常、小児血液科医師、血液内科医師、看護師、ソーシャルワーカー、理学療法士、整形外科医師、公認心理師、そして歯科医師が加わっています。血友病治療施設は子どもから高齢の方までの治療を行っており、問題が起こるのを食い止め、また問題が大きくなる前に対応する努力を続けています。
治療チームは、定期検診を通してどんな課題があるかご家族にお伝えすることができます。チームのスタッフはお子さんが何を考え、感じているかを気にかけ、日々の問題に対応してくれます。というのも、あなたと同じ立場のたくさんのご家族と関わっているため、どんな問題が起こり得るか経験的に分かっているからです。彼らはまた、お子さんにいつ凝固因子を投与したらいいか決定するタイミングについても助言を与えてくれます。
包括医療の目標は、血友病の患者さんに長く、活動的な人生を歩んでいただくことです。血友病治療施設はご家族をサポートし、お子さんが直面する身体的、精神的、または社会的問題を克服できるよう手助けをします。ぜひ、お近くの血友病専門施設を確認してください。
日本国内では、血友病治療専門施設は少なく、地域や大学病院の小児科やこども病院などで診療が行われています。実際に包括医療を行っている病院や、各専門スタッフが不在のために医師と看護師が中心になって包括医療を行っている病院など様々です。包括医療をシステムとして行っていなくても、血友病のお子さんにとって適切な医療を行っている病院も多く存在します。また今後は、医療機関同士の情報の共有が大切になってくると考えています。もし、最寄りの病院で包括的アプローチができない場合には、近隣の包括医療が行われている病院か地域の該当科を紹介してもらうとよいでしょう。
サマーキャンプや友の会に参加してみよう
サマーキャンプは、血友病の子どもたちやご家族のために各地域で開かれています。目的は親睦や自己注射や家庭注射導入の方法を学ぶなどですが、キャンプにより少しずつ異なります。キャンプに参加することで、成長した子どもたちを見ることがご両親の励みとなり、またたくさんの情報を得ることになるでしょう。
何より、子どもたち同士が接することも大切だと思います。機会があれば、近くのキャンプに参加してみるのもよいでしょう。宿泊が無理であれば、日帰り参加ができるか問い合わせてみてください。対象を兄弟姉妹まで広げて、血友病児の理解に努めているキャンプもあります。サマーキャンプの詳細については、主治医や友の会に問い合わせてみましょう。また、全国には多くの血友病患者さんの友の会があります。「ヘモフィリア友の会全国ネットワーク」や各地域の友の会に参加することで、患者さん・ご家族の交流を深めることのみならず、多くの知識や情報を得ることができます。積極的に参加してみましょう。
用語:
【包括医療】患者さんの生活を身体的、精神的、感情的にサポートするため、専門家チームと共同で行うヘルスケアのことです。専門家が協力し合えるよう、ケアはたいてい大学病院などの施設で1ヵ所にまとまって行われます。