冊子「Friends」
【体験談】血友病のいろんな「職場・仕事」〜やっぱり多いぞ、IT関係

やっぱり多いぞ、コンピュータ関連

SE-営業
SEといっても営業と紙一重。顧客との間に立って仕様を決めて、見積もり出すことがほとんど。現場に出たり、イベント協力することもある。体的にはOKだから、職場にはもちろん何も言っていない。銀行関係の仕事は要求が厳しいですよ。

システム開発
駅まで車通勤しているので、出血は月に一回程度。仕事は忙しい時と閑な時の落差が大きい。季節の変わり目や睡眠不足だと出血は増える気がする。

ソフトウエアサポート
関節障害の障害者枠で入社。外資系でもあるせいか、特に差別なども感じない。電話でのソフトウエアサポートの仕事をしている。関節の具合はいいけど、ストレスが増えたせいか、最近、タバコ吸い過ぎ。

SE-開発部
出勤直後に足などに違和感を覚えた時は、職場に薬を置いていないので困った。だましだまし、購買で湿布を買って貼ったり、午前中から今日は体調が悪いと宣言して具合の悪そうな顔をしてみせたり・・・。できれば早退しても不審がられないように、定時に帰っても不審がられないように、悪くても超過勤務が短くて済むようにして準備することが肝心。

プログラマー
一週間の泊り込みの新人研修が苦労した。最初に予防だけして製剤を打たずに一週間すごしたけどきつかった。あとは泊まりの出張で二人部屋になったときに製剤の保管や輸注に苦労した。

SE-企画開発
現場によって土日の出勤もあり、残業も実質100時間越えたことも珍しくない。今は「組込み作業」から「企画開発」に部署が変わったので身体は楽になっているが、出血にはあんまり関係ないみたい。

CGデサイナー
自営でやっているので、どうしても顧客との打ち合わせで出歩くことが多く、都心では車も使えないことがほとんど。重い荷物を持っていくので、足の出血は多く、徐々に悪くなった感じ。機会をみて、徹底的に治して、リハビリし直すつもり。

SE-派遣社員
出張が多いので、足が不調のときはたいへん。また銀行関係の仕事で24時間スタンバイ状態で何日も帰れないこともあった。ほとんど連日輸注しないといけないこともある。通勤は車かバイクでないと無理だと思う。

システム販売
今は特に厳しい時代であり、健康な人でも偏差値の高い大学をでた人でもやる気の見られない人、精神的に弱い人は絶対にやっていけません。実際にやめていく人も非常に多いです。逆にやる気があり、実績がだせれば学歴がなくても持病があってもやっていけるというところでしょうか。むしろ病気を体験してつらい思いをしてきたような人間の方がよいのかもしれません。

Column1
「血液凝固異常症のQOLに関する研究」の結果からみえてきたこと
血液凝固異常症のQOLに関する研究とは?

血友病患者さんと家族の生活の質の向上を図る目的で、数年一度に調査が行われています。これは厚生労働省の科学エイズ対策研究事業「血友病の治療とその合併症の克服に関する研究」の分担研究として、血液凝固異常症QOL調査委員会が担当して実施し、報告書にまとめられています。
平成23年2月に発行された「血液凝固異常症のQOLに関する研究」調査報告書が最新のものです(平成23年7月現在)。
報告書では、なかなか知り得ない他の患者さんの生活の一端が見られ、多くの患者さんと家族が参考にしています。それだけでなく、血友病専門医らが、国に対策を求めたり、医療体制を考えたりする際の出発点にもなっています。ここでは最近の報告書の中から、仕事について皆さんの疑問に答えられるところを見てみましょう。

Column2
「血液凝固異常症のQOLに関する研究」の結果からみえてきたこと
皆、血友病のことを打ち明けている?
周囲への病気の通知

学校では9割の方が周囲に病気を明かしているのに比べ、職場には2/3の方しか知らせていないことがわかります。この程度の数字でも、昔を知っている方なら、「今はこんなに明かすようになったのか」と感心するでしょう。それほど職場で血友病を明かすということは大変なことでした。もっとも大きいのは偏見による差別・排斥の危険性です。患者さんも仕事上、かばわれるのを嫌がる人も少なくありません。本来、あってはならないことですが、高額な医療費が健康保険組合を圧迫すると言われた方もおります。自営業、家族会社などに勤めている方もいますので、実際には過半数程度の方が一般的な会社員として伝えているものと思われますひとつ注意していただきたいのは、これは調査時現在、通知しているかを尋ねたものですので、就職試験時に伝えている場合を含んでいません。この就職難の時代の中、打ち明けて就職している方はさらに少ないかもしれません。

Column3
「血液凝固異常症のQOLに関する研究」の結果からみえてきたこと
どのような仕事に就いている?
職業の種類

実際に就職している方269人の内訳です。会社員の詳細がわかりませんので、はっきりとは言えませんが、これを見る限りあまり身体的に負担の大きい仕事には就いていないようです。確かに多くの患者さんは業務が原因で慢性的に出血する不安を訴え、志望よりも安全な職業選択を考えます。これもその表れかもしれません。しかし編者の勤務する病院で、22-60歳の無職を含む患者さんを調査したところ、2割を超える人が営業、販売、運輸、職人や現場作業員に従事していました。適切な出血時の管理と本人の意志があれば、身体的に負担の大きい仕事も一概に無理だとは言えないようです。学生の方にはいろいろなアルバイトを経験して、自分の体調と仕事の負担について知っておくことをお勧めします。

参考:
  • Friends「仕事に行こう」編(小島賢一)