患者さんとご家族のための血友病情報誌「ファイン」 Vol.10

「ファイン」 Vol.10
Contents

臨床工学技士として働く39歳の患者さんの体験談

血友病だったからこそ、今の自分があります。
野崎 暢仁さん 臨床工学技士

 野崎さんは、病院で働く39歳の臨床工学技士です。昔はおとなしくてあまり話さない子供だったそうですが、患者としての経験からコミュニケーションの大切さを実感し、今は患者さんやスタッフとのコミュニケーションを大事にしながら働いています。「患者としてお世話になった分、医療に関わるスタッフとして貢献していきたい」と考え、病院の業務以外でも月2回の講演などを行って活動の場を広げています。

おとなしかった幼少時代

――― 子供の頃はどんなお子さんでしたか?

野崎さん:兄はスポーツマンで活発でしたが、私はあまり自分から話さないおとなしい子供でした。両親には「自分らしくいれば良い」と言われていましたので、自分だからできることは何かなと考えるようになりました。また、両親に「お前は病気だから」と言われたことがなかったので、あまり血友病を意識せずに育ったと思います。

――― 血友病と診断されたのは何歳の頃でしたか?

野崎さん:2歳の頃、食事の時に舌をかんでしまい、出血が止まらなかったことがきっかけで血友病Aと診断されました。私の家系には血友病患者がいなかったので、家族は驚いたようです。

――― それからどのような治療をされましたか?

野崎さん:小学生まで出血時補充療法を行っていました。激しい運動は制限していたものの、足首の内出血が頻繁にありました。痛くて眠れない夜に、片道40分かけて大学病院の救急外来を受診していたことを覚えています。

――― ご自宅での定期補充療法を始めたきっかけを教えてください。

野崎さん:中学生になると週に2~3回、近くの病院で定期補充療法を受けるようになりました。高校に通うようになると時間的に通院が難しくなり、週3回の自己注射を始めました。

――― 定期補充療法(自己注射)になってどんなメリットを実感しましたか?

野崎さん:まず、通院が少ないことと、すぐに投与できるので出血による痛みを回避できることが大きなメリットだと感じました。また、自分でコントロールすることによって「自己責任」という感覚が身につき、無理な行動が少なくなったように思います。

――― 輸注を続けるコツは何ですか?

野崎さん:私の場合は、輸注せずに出血して痛くなって、輸注しておけば良かったと後悔する、ということを繰り返した結果、定期補充療法の大切さを実感しました。今では自分で体の状態がだいたいわかるようになって、自己注射でうまくコントロールして臨床工学技士の仕事を続けています。

コミュニケーションの大切さを実感しています

――― 臨床工学技士を志したきっかけを教えてください。

野崎さん:進路決定の際に「自分は何がしたいのか?」と考えた結果、やっぱり今までお世話になった医療に恩返しがしたいと思ったことが大きな理由でした。それから臨床工学技士として病院に就職して15年以上が経ちますが、体調不良を理由に休んだことは一日もありません。

――― 臨床工学技士は、当直もあるハードな仕事ですよね?

野崎さん:週3回の当直があり、ほぼ毎日オンコールがあります。でも当直のほうが楽な部分もありますし、「痛くなるかな」と思った時にすぐ自己注射しているので、出血や痛みはずいぶん回避されていると思います。

――― お仕事をする上で大切にされていることは何ですか?

野崎さん:私は医療スタッフとして、患者さんに対するコミュニケーションが一番大切だと思っていて、患者さんとも積極的に話すようにしています。また管理職として新人スタッフには、「挨拶と返事は欠かさないように」と繰り返し言っています。

――― 現場の業務だけでなく、管理職としても活躍されているのですね。

野崎さん:管理職としてスタッフ同士のコミュニケーションも大切にしていて、朝礼と昼食の1日2回は必ずスタッフと顔を合わせるように心がけています。毎日顔を合わせていれば、その日の体調や気分もある程度わかりますし、それによって担当を変更することもあります。オンとオフの切り替えも大事だと思うので、昼食の時は仕事の話はせずに冗談や楽しい話をして過ごすようにしています。

――― コミュニケーションを大切にするようになったのはどうしてですか?

野崎さん:昔はあまり自分から話しかけるタイプではなかったのですが、仕事を始めてから色々な人と積極的に話すようになりました。周りのスタッフに恵まれていて話しやすい雰囲気だったこともありますが、やはり患者としての経験が大きいと思います。

――― どのような経験をされたのですか?

野崎さん:私も患者として医療スタッフに優しくされたり、時には厳しく怒られたりすることもありました。そのコミュニケーションによって、自分のことを心配してくれていることを実感できましたし、安心して治療を受けることができたのです。このような経験をしている私だからこそ、できるコミュニケーションがあると思っています。

支えてくれた多くの人に感謝しています

――― 血友病は、野崎さんにとってどういう存在ですか?

野崎さん:血友病だったからこそ、今の自分があると私は思っています。私を支えてくれた家族や主治医の先生、医療関係者の皆様に感謝の気持ちでいっぱいです。そして、血友病とともに生きてきた結果、誰よりも生きている喜びを感じる日々を過ごしています。

――― 今後はどのような活動をしていく予定ですか?

野崎さん:現在は、臨床での勤務に加えて学会やセミナーなどで講演を月2回行っていますので、引き続き活動していきたいと考えています。それが、今まで患者としてお世話になった人々や医療への恩返しになればと思っています。

――― 最後に、患者さんとそのご家族の方にメッセージをお願いします。

野崎さん:周りの人に何を言われてもマイペースに過ごすことが大事じゃないでしょうか。痛ければ休めば良いし、無理をせず周りの人に助けを求めても良いと思います。「病気だから」と他人に言われたら悔しい思いをするかもしれませんが、それはそういう意見もあるのだな、と思えば良いことです。無理をせず自分らしく生きることが、何より大切だと思います。

真剣な眼差しで医療機器を操作する野崎さん。臨床工学技士として現場の仕事をこなしながら、管理職としても活躍しています。スタッフと楽しそうにお話している姿を見て、良い関係を築いていることが伝わってきました。プライベートでは元気いっぱいの息子さん(5歳)のパパでもあり、公私ともに充実した毎日を送っています。

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