患者さんとご家族のための血友病情報誌「ファイン」 Vol.9

看護師として働く27歳の患者さんの体験談

血友病を理由に何かをあきらめたことはありません。
むしろ血友病は自分の強みだと思っています。
福嶋 賢さん(仮名)看護師

 福嶋さんは、看護師として病院に勤務する27歳です。子どもの頃から明るく活発な性格で、学生時代はサッカーやブレイクダンスなど、好きなことを思い切り楽しんできました。「血友病は自分の強み」と笑顔で話す福嶋さんは、将来的に血友病患者さんをサポートする専門的な看護師になりたいそうです。優しく頼りがいのある福嶋さんに、子どもの頃のことから現在の看護師業務のことまで、色々なお話をお伺いしました。

とにかくサッカーが大好きな活発な子どもでした

――― 血友病と診断されたのは何歳の時でしたか?

福嶋さん:1歳前と聞いています。はいはいをしていてあざや皮下出血が消えない、足が動かない、という症状があり、病院を受診して診断されました。

――― 家庭での定期補充療法はいつから始めましたか?

福嶋さん:小学校4年生か5年生の時に行われた学校の宿泊学習がきっかけで始めました。家で定期補充療法を行うようになってから、通院する頻度がだいぶ減ったので生活のレベルが上がりましたね。家では母親に注射をしてもらっていましたが少しずつ自分でもやるようになり、注射をすべて自分で行うようになったのは中学生くらいだったと思います。中学生の頃は反抗期だったこともあり、母親に八つ当たりをして注射をしなかった時期もありました。でも結局、注射をしないと足が痛くなるので、大好きなサッカーを続けるために注射していました。

――― サッカーはいつから始めたのですか?

福嶋さん:サッカーは小学校2年生から中学校3年生まで続けていました。小学生の時にくじいた足首が痛む時もありましたが、サッカーが大好きだったのでテーピングで固定したり、冷やしたりして練習や試合に積極的に参加していました。その頃はスポーツについて相談できるドクターが少なく、主治医の先生もあまり賛成はしていませんでしたが、私がサッカーばかりやっているのであきらめていたのではないでしょうか。

――― 学生時代は、周りの方に病気のことをどのように伝えていましたか?

福嶋さん:特に言う必要もないと思っていたので、自分から積極的に言うことはほとんどありませんでした。合宿などで部屋が一緒になった友達には、必要に応じて簡単に説明していました。学校には、母親が説明してくれました。担任の先生が替わるたびに母親が一生懸命集めた血友病の資料を使って説明していたことを覚えています。今では色々な資料がありますが、当時はわかりやすい資料が少なくてとても苦労していたようです。大きな町ではなかったので、親同士のネットワークなどでなんとなく知られていたのかもしれません。幸いにも大きな怪我や入院もなく、活発な子どもだったので、先生も周りの友達も忘れていたのではないでしょうか。

看護科の高校に入学して、ブレイクダンスを始めました

――― 中学校を卒業して、看護師を目指したそうですね。

福嶋さん:最短の5年で看護師資格が取得できる看護科の高校へ進学しました。看護師を志した理由は、血友病という自分の強みや経験を生かして患者さんのサポートをしたいと考えたからです。その高校には2歳年上の姉も看護師を目指して通っていたので、不安は特にありませんでした。

――― 高校生になってから何かスポーツはしていましたか?

福嶋さん:高校生の頃はブレイクダンスをしていました。新しく通院するようになったクリニックの先生はスポーツをすることに寛容だったので、色々と相談できるようになりました。また、このクリニックには血友病の患者会があり、患者さんとの交流もできました。子どもの頃に1回だけ別の患者会に参加したことがあるのですが、その時は年配の方ばかりだったので同じ世代の患者さんと情報交換ができたことが新鮮でした。このクリニックの患者会には、上京してからも何回か参加させてもらいました。

――― ブレイクダンスは、サッカーよりハードですか?

福嶋さん:ブレイクダンスにも色々ありますが、基本的に場所が違うだけで怪我の可能性や体の負担はサッカーとあまり変わらないと思います。高校生になってからは自分の体と向き合いながら筋トレもしていたので、筋肉が関節を守ってくれていたのかもしれませんね。

血友病に負けないで、色々なことにチャレンジしてほしい

――― 今は、看護師として働いていらっしゃるそうですね。

福嶋さん:看護学校卒業後、上京して都内の病院で働き始めて7年になります。今は全科対応病棟で働いており、看護師として幅広い領域の知識や技術を習得していますが、将来的には血友病という自分の強みや経験を生かして、血友病患者さんをサポートする専門的な看護師になりたいと思っています。

――― 病棟の看護師は夜勤もありますよね。体力的にハードじゃないですか?

福嶋さん:夜勤は月4~5回ありますので、シフトに合わせて定期補充療法を続けています。病院における夜間緊急入院のほとんどを受け入れている病棟なので、一晩で少ない時は2〜3件、多い時で10件の入院があります。でも、忙しい状況がずっと続くわけではありませんし、業務に慣れていることもありますが、体力的に辛いと感じたことはあまりないですね。体調管理としては、睡眠を十分にとるように心がけて、お風呂あがりのストレッチをずっと続けています。

――― 看護師になって良かったと思う時はとんな時ですか?

福嶋さん:患者さんから言われて心に残っている言葉はたくさんあります。でも一番嬉しかったことと言えば、私の存在を知り、看護師の道を目指すようになったという血友病の方とお会いした時です。自分の存在や言葉によって、看護師に限らず自分の将来に前向きになってくれる血友病患者さんが増えたら嬉しいですね。

――― 色々なことにチャレンジしてきた福嶋さんですが、血友病で困難だったことはありますか?

福嶋さん:私は血友病で困難と感じたことや、血友病を理由に何かをあきらめたことはありません。むしろ血友病は自分の強みと考えています。このように考えられるのは、昔から「治療法もあるし学校も行けるのだから、血友病は病気じゃない」と言っていた母親のおかげかもしれません。私の母親は血友病だからといって私を特別扱いせずに、他の子と同じように好きなことをさせてくれました。きっと好きなことが自由にできる環境だったからこそ、血友病をあまり意識せずに今日まで過ごしてこられたのだと思います。

――― 最後に、読者である患者さんとそのご家族に一言お願い致します。

福嶋さん:血友病患者さんには、病気に負けないで色々なことにチャレンジしてほしいと思っています。そのためには、ご家族は少し離れた所からお子さんを見守ることも大切なのかな、と考えるようになってきました。ご家族にとっては心配だと思うのですが、主治医の先生と相談しながら、お子さんがのびのびと好きなことをできるようにそっと見守ってあげてほしいです。

今は家族と一緒にいる時間を大切にしている福嶋さん。
高校時代の同級生だった奥様と、3歳と6ヵ月のお子さんの4人家族です。
仕事から帰ると家族が笑顔で迎えてくれたり、休日は家族と過ごしたりすることがなによりの幸せ、と話してくれました。
就職してから運動する機会が減ったので、お子さんと一緒にダンススクールに通いたいそうです。

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