ハロー! ドクター
症状が軽い患者さんこそ、将来に備えて医師と
信頼関係を築いておくことが大切です

札幌北楡病院 小児科部長の小林良二先生は、日々の診察に加え、
道内各所の血友病患者さんの出張診察、若手医師の指導に論文執筆と多忙な日々を送っています。
今回は、そんな小林先生に、血友病診療への考えや今後の展望などを伺いました。

目次

社会医療法人北楡会 札幌北楡病院 小児科部長 小林良二先生
社会医療法人北楡会 札幌北楡病院 小児科部長
小林良二先生

■PROFILE
1984年、旭川医科大学卒業、同年より北海道大学医学部附属病院小児科医員。以後、国立札幌病院小児科、北海道社会事業協会帯広病院小児科、釧路赤十字病院小児科勤務を経て、2004年、北海道大学病院小児科講師。2007年より現職。

18歳までを対象とした「小児思春期科」を設立

 北海道札幌市内に立地する札幌北楡病院には、全国でも珍しい小児思春期科があります。もとは小児科だった本科が18歳までを対象とした小児思春期科になった背景には、思春期や若年成人の患者さんへの治療と学習支援に対する小林良二先生の熱い思いがありました。
 小児科の対象年齢は15歳までで、それ以上の年齢の患者さんは内科で診察されることが一般的です。しかし、15歳以上の若年成人患者さんでも、小児の代表的な血液系腫瘍であるリンパ腫や白血病は小児科での治療法のほうが成績良好であること、他のがんについても小児科のほうがより適切な治療環境にあることが知られています。また、この年代の患者さんに入院が必要な場合、小・中学生の患者さんを対象としている院内学級に参加することは難しく、学習の機会が失われてしまいます。
 このような問題点に加え、当時、小児科学会で成育医療※という考えが提唱されていたこともあり、小林先生は小児思春期科設立の必要性を内科部長に訴え、さらに北海道の教育委員会に院内高校の設立を提案しました。設備の問題などにより院内高校の設立は叶いませんでしたが、小児思春期科は設立され、さらに最近では、幸運な出会いもあり、3名の教育ボランティアを得て、学習支援をしているそうです。

※胎児期から小児、思春期を経て次世代を育成する成人期までの過程で生じるさまざまな健康問題を
 包括的に捉え、それに適切に対応する医療を指す(公益社団法人日本小児科学会ホームページより)

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半日以上かけて道内の血友病患者さんを出張診察

 小林先生の血友病診療は、道内での出張診察が大半だそうです。数箇所の病院に出張していますが、広い道内のこと、遠いところでは電車で4時間半と1日の大半以上を移動に費やすほど。移動だけでも大変そうですが、「一人になれるこの時間が、私にとっては唯一のリフレッシュの時間なのです」と小林先生は笑います。
 現在、小林先生が診察している血友病患者さんは10名ほどで、年齢は1歳から20歳以上までさまざまです。このうち、3割の方は自己注射をしているそうですが、患者さんの保護者には、患者さんが小さいうちから、「3歳をめどに家庭輸注を、小学校高学年位からは自己注射を」というようにお話しし、家庭輸注の適正年齢に達するまでに心構えをしておいてもらっているといいます。
 とはいえ、保護者にとって家庭輸注へのためらいは小さくなく、保護者が納得するまでのハードルは高いようです。「それはそうでしょう。今まではお子さんを励ます立場だったのが、今度はご自身がお子さんを、ある意味、痛めつける立場になってしまうのですから」と、小林先生も保護者の気持ちに共感しています。
 そんな状況で頼りになるのが、出張診察先の看護師さんだそうです。地域の病院では人手が足りないことが多く、広範囲の業務をこなす優秀な看護師さんは、難しそうなお話もとても上手なのだとか。「地域の看護師さんに指導をお任せすれば安心です」と小林先生は厚い信頼を寄せています。

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将来のよりよい生活を考えれば、定期補充療法は理に適った治療法

 最近、定期補充療法について、その有効性の報告が蓄積されるようになったこともあり、関心が高まっています。しかし、小林先生は、血友病診療に携わった当初から、それが理に適った治療法と考えていました。「出血してから凝固因子を補充するより、出血させないような治療法を採用したほうが将来のQOL(quality of life;生活の質)にとって望ましい」という考えの下、患者さんが小さなうちから、ご家族に定期補充療法について教育してきたそうです。
 実際に、小林先生の患者さんの多くが定期補充療法を実施しているそうですが、輸注記録の状況については、「何しろ相手は男の子ですから」と、苦戦されています。血友病治療において、輸注記録は単純な記録以上の意味をもっています。患者さんが治療の状況や出血頻度などを記録することで、病態の経過を改めて振り返ることができ、医師に提出することで、受診していない間の患者さんの状態を把握してもらうことができます。

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進展が期待される札幌北楡病院の血友病診療

 札幌北楡病院での診療、道内数箇所への出張診察に加え、月に数回の休日当番医も務める小林先生には、ほとんど休みがありません。同時に若手医師の指導や論文執筆もこなすという活躍ぶりですが、ご本人は「毎日普通に生活しているだけです。論文執筆は趣味ですし」と淡々としたご様子。
 札幌北楡病院のホームページに表示されている小林先生の論文タイトル数は、1画面では表示しきれないほどです。小林先生が論文を執筆することは若い先生の刺激になり、競って論文執筆をするような環境になっているそうです。こうした環境は病院の質を高め、そのことで優秀な医師が集まるようになり、さらに病院の質が高まる、という好循環につながっていきます。
 小林先生は将来の血友病診療について、今後は成人の血友病患者さんが増えてくるため、小児科と内科が垣根を越えて連携する診療体系が重要と考えているそうです。「現状、内科では血友病患者さんの受け皿がない場合が多いように思います。当院は、血友病診療に関心がある内科の若い医師がいるので、小児科と内科の連携という点では有望な施設になりうるのではないでしょうか」と、札幌北楡病院の将来に期待を込めて話してくれました。

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軽症患者さんこそ、定期的な受診で医師との信頼関係の構築を

 最後に小林先生から、血友病患者さんやご家族に向けて、「軽症患者さんこそ、定期的に受診して医師との信頼関係を築いてください」とのメッセージをいただきました。
 小林先生は、重症患者さんだけでなく、軽症〜中等症の患者さんとの信頼関係も重視しているとのこと。軽症〜中等症の患者さんたちは定期的な受診をしていないこともあるようですが、いざというときのために、医師との信頼関係が築けていることがとても重要といいます。
 小林先生の場合、出張診察先の患者さんには数ヵ月に1回程度しか会わないため、患者さんとの信頼関係を築く難しさを実感しているそうです。だからこそ、定期的に受診しておくことの重要性を強調します。「血友病診療を重ね、軽症の患者さんに対しても、『また来てください』ではなく、次回の予約を決めるなど定期的に経過を追うようにすべきだと考えるようになりました」とこれまでの経験を振り返ります。
 「専門医を受診することなく薬だけもらって管理できている患者さんもいらっしゃると思いますが、何かのきっかけで大きな出血を起こす可能性もあります。いざというときに備えて、定期的に受診してみてください」というアドバイスには、患者さんの将来をも見据える小林先生の思いが込められていました。

社会医療法人北楡会 札幌北楡病院

社会医療法人北楡会 札幌北楡病院
〒003-0006
北海道札幌市白石区東札幌6条6丁目5番1号
TEL:011-865-0111(代表) FAX:011-865-9719
URL http://www.hokuyu-aoth.org/index.html
● 病院データ
小児思春期科は外来・入院とも基本的に18歳まで(場合によってはそれ以上の年齢)の診療を行っており、日本血液学会認定血液専門医による高度医療の提供と学習支援への注力が特徴です。

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