賢い患者学
〜コミュニケーション力を磨いて、賢い患者になりましょう〜 第5回 

最終回の今号は、「質問上手になる」「患者からも情報提供を」の2つのポイントをお話しいただきます。ぜひ、今後のコミュニケーションに役立ててください。

〜コミュニケーション力を磨いて、賢い患者になりましょう〜 第5回-目次

NPO法人ささえあい医療人権センターCOML 理事長
山口育子さん

■PROFILE
山口育子さんプロフィール

NPO法人ささえあい医療人権センターCOML
Consumer Organization for Medicine & Law
医療を消費者の目で捉えようと、1990 年9月に活動をスタートした市民中心のグループ。患者と医療者が対話と交流の中から、互いに気づき合い、歩み寄ることのできる関係づくりを目指し、電話相談や「患者と医療者のコミュニケーション講座」など、様々な活動を行っています。 http://www.coml.gr.jp/

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質問上手になる

「先生にうまく質問できない」。そんな悩みを持つ方は多いと思います。しかし、相手の立場になってみること、自分の思いを率直に伝えることを心がければ、それほど難しいことではありません。今回は質問上手になるためのちょっとしたテクニックを紹介します。

相手の立場になってみることが大事

 10年くらい前から患者とのコミュニケーションについて、医療者から相談を受けるようになりました。医療者も悩んでいるということに、私たち患者はなかなか気づかないのではないでしょうか。
 私共が主催しているコミュニケーション講座では、参加者が患者役と医師役に分かれてロールプレイを行います。医師役になった方が「患者役の発言で逃げ出したくなりました」「でも、私もこういうタイプの患者だったと思います。自分のコミュニケーションが適切でなかったことに気づきました」とおっしゃったことがあります。相手の立場になって、自分のコミュニケーションを見直してみることが大事です。
 ある時、「医師が薬の副作用の説明をしてくれないのです」という電話相談を受けたことがあります。その方は不安を前面に出して「どんな副作用がありますか?」とたずねたそうですが、それでは医師は患者が副作用を気にして薬を飲まないのではと懸念し、話すのをためらう場合もあるのではないでしょうか。「この薬を飲んで、注意しなくてはならない症状は何ですか?」と聞けば、飲むことが前提であることが伝わるので、医師は詳しく説明してくれるはずです。相手の立場になって質問の仕方を少し工夫するだけで、得られる回答は変わってきます。

質問するまでの過程も話し納得いくまで確認

 「先生が話してくれたことで、よく分からないところがあるから再度質問したいのだけど、『聞いていなかったのか』と不快にさせてしまうかもしれない」と考えて、質問を躊躇していませんか。わかったふりはよくありません。十分理解できるまで質問していきましょう。
 上手に質問するコツは「前回」「先程」など一言加えることです。この一言で“聞いていた”ということは伝わります。さらに、「前に説明していただいたのですが、家に帰ってメモを見直したら疑問が出てきたので、もう一度教えていただけますか」と言えば、相手は快く、より丁寧に説明してくれます。
 また、理解したことは自分の言葉で再度確認しましょう。同じ言葉でも医療者と患者ではまったく違ったイメージを抱いていることがあります。例えば「よく効く抗がん剤」と聞いたら、私たち患者は9割以上の確率でがんが消えるというイメージを持ちがちです。しかし、医療現場では3割台の確率で小さくなればよく効くとされています。「その抗がん剤を使えば私のがんは9割の確率でなくなるんですよね」と確認すれば訂正が入り、共通の認識が生まれます。
 今回お話した相手の立場になることや、質問の仕方の工夫、理解したことを自分の言葉で確認することは日常から心がけることが必要です。ふだんから意識していくことで医療現場でも自然に行えるようになります。

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患者からも情報提供を

治療は患者と医療者が協働して行うものです。患者からも医療者に情報を提供し、よりよい治療方針を選択していけるようにしましょう。

100%正確な情報でなくてもOK
よい変化も悪い変化もすべて報告

 医療者には症状の変化はすべて話しましょう。例えばわずかな出血があったけれど、時期は覚えていなかったとします。「正確なことが言えないなら話さないほうがいい。大したことなさそうだし」と勝手に判断して、「変わりありません」と言っていませんか? わずかな変化でも医療者にとっては注目するべき症状ということがあります。100%正確な情報を伝えようと思わずに、「すごく軽かったのですが、出血がありました。それが、いつだったかは覚えていないのですが」というだけでも十分なのです。
 また、よくなったことを話さない人が多いように感じますが、よくなったことも変化の一つ。変化はすべて、ありのままに報告しましょう。

今後の見通しを確認する

 治療を行っている節目節目で今後の見通しを尋ねるようにしましょう。新しい治療法が提示された時や進学や就職などの生活に変化があった時などがそのタイミング。「新しい薬を使うと、どのくらいで、どんな効果が出るのですか?」「クラブ活動をしたいのですが問題ないですか?」「仕事でこんな予定があるのですが…」などを確認しておけば、新たな試みを安心して始められます。

医療の限界と不確実性を意識する

 医療は治せない病気のほうが多い、不確実で限界があるものです。と聞くと、ショックを受ける方もいらっしゃると思います。しかし、私は医療の不確実性を意識することで「この症状は医療の力を借りることが可能」とか「この質問はドクターにも答えられないだろう」などと判断できるようになり、患者として冷静に医療と向き合えることになりました。この意識がないと医療に過度に期待して、うまくいかなかったら不信感を抱くというように両極端に動いてしまいます。
 インフォームドコンセントは医療者の役割だと思われがちですが、半分は患者が担っています。医療者から情報を得て、治療の効果や限界や不確実性を理解し、同意するのは患者です。これは非常に負担が大きいことでもあります。ですから、決して一人で悩まず、医療者や私たちのような相談機関などに相談してください。そして、ここで学んだ賢い患者の心構えやコミュニケーションを意識していただき、皆さん一人ひとりにとってよりよい医療の選択をしていただけたらと願っています。

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病歴作成のすすめ

 血友病も他の病気も含めて、病歴(いつ、どんな診断を受けたか、入院、手術、薬など)を作っておき、初めてかかる病院や他科を受診する時に持参するといいでしょう。パソコンで作成し、その都度更新していけば、常に最新の病歴を用意できます。記憶をたどりながら口頭で説明するのは結構難しいもの。日頃の準備が大切です。
 また、輸注や出血の記録もつけておきましょう。今後の治療方針を考える大切な情報になります。ノートのほか、モバイルで記録できるものもありますので、自分が使いやすいものを選びましょう。

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