“ファイン”な仲間たち[ 体験談 ]三兄弟の患者さんとご家族の体験談
血友病を家族の“光”ととらえて…

ゲーム機を片手に、時々インタビューに参加し、淡々と思いを語ってくれる長男の伸之さん、ママの横でニコニコとマイペースの次男博之さん、ソファーの上で飛び跳ね、片時もじっとしていないお茶目な三男雅之さん。それぞれ個性いっぱいで元気な三人兄弟を笑顔で見つめながら、母の奈穂子さんは血友病と家族について語ってくれました。

目次

12歳、9歳、5歳元気いっぱいの三兄弟

――みんな元気ですね。ではまずご家族を紹介してください。
 はい。子どもは3人で、全員男の子です。長男の伸之は6年生、次男の博之は4年生、三男の雅之は5歳で保育園の年長さんです。
伸之さん(長男) 僕は野球をしています。4年生から始めて、今はセカンドを守っています。1番打者です。
 次男の博之は電車や地図が好き。雅之は恐竜ジャーや仮面ライダーが好きです。私はパートタイムで仕事をしています。外に出て働くのが好きなので。パパは48歳、野球が大好き、優しくちょっと厳しいよいパパです!

――お子さんは皆さん血友病とお聞きしていますが。
 はい。3人とも凝固活性は1%以下で重症です。次男の博之は生まれる時に、頭蓋内出血を起こし、生後5日目で開頭手術をしました。左脳の側頭部が脳梗塞になり、命は助かりましたが知的障害があり、ちょっと“ゆっくりさん” です。三男が生まれ、今は兄弟3人でよく遊びます。成長しているので、年々子育ては楽になってきています。

――お子さんが血友病だと知った時はどのように思いましたか。
 私の兄が血友病でした。姉の子どももそうです。結婚する時に「血友病の子どもが生まれるかもしれない」ということを彼に話したら、「全然、大丈夫」と言ってくれました。ですから伸之が生まれ、「血友病です」と診断された時も、「やはりそうか」という感じでした。兄は10歳年上で、私は4人兄弟で、当時、実家には祖母もいてにぎやかでした。兄の病気は大変でしたが、他の兄弟姉妹たちの起こすいろいろな出来事と同じように、私たち家族は病気のことを自然に受け入れて暮らしていました。

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家庭輸注で生活が楽に

――お子さんは3人とも早期から定期補充療法を開始されたそうですね。
 はい。先生に勧められて、早い時期、長男が2歳の時から定期補充療法をしてきました。長男が3歳になる前に次男が生まれましたから、当時は2人が週2〜3回病院で注射をしてもらい、さらに救急で注射を打ちに行くこともあり、最も大変な3年間でした。私は働きたかったので、注射ができるよう訓練しました。自宅で注射をするようになってからは生活は一変し、とても楽になりました。
 子どもたちは、3人とも静脈に直接お薬を入れられるよう、ポート*という器具を鎖骨の少し下の皮膚の内側に手術して入れました。そこにポート専用の針をプツンと刺せば血管を探さなくても注射ができるものです。ポートは便利ですが感染症になりやすいのが難点で、時々熱が出て大変でした。長男は腕に注射ができるようになったので3歳でポートを外しましたが、次男は少し自閉症の傾向があり、変化を嫌うので8歳になる去年まで、三男も4歳くらいまでポートを利用していました。今は私が次男、三男の注射をしています。

――伸之さんは6年生でもう自己注射ができるのですね。
伸之さん はい。去年、4泊5日の林間学校があったので、その間自分で注射できるように半年前から練習しました。林間学校ではキャンプファイヤーと、お化け屋敷、魚採り、登山などとっても楽しくて、行けてよかったです。今は曜日や時間は決めていませんが2日に1度くらい打っています。
 林間学校は自己注射を始めるのにとてもよいチャンスでした。それ以前は、パパが母親の私にきちんとコントロールするように言っていましたが、次第に「もうママに頼らずに野球の前は注射して、何日目なのか自分で考えなさい!」と伸之に言うようになりました(笑)。
伸之さん そう。自分のことだから、今は自分で考えてます。たとえば「大事な試合の前だから」とか、考えて打ったりしています。

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病院スタッフに支えられた子育て

――近い将来は、次男さん、三男さんも自己輸注を視野に入れていらっしゃるのでしょうか?

母 次男もだいぶ成長してくれま したが、まだ手はかかりますね。三男はちょこちょこ動き回ります。心配して注意しても全然聞いてくれないです(笑)。階段から落ちたり、ねんざしたり…。だからずっと病院のスタッフの方に、お世話になり、ご迷惑をおかけしながら、育ててきました。
 特に出産時に脳梗塞を起こした次男については、私自身が強い不安や自責の念を抱えながら通院していた時期が、2年ほどありました。その時に、先生や看護師さんには本当に助けられました。来年5年生ですが血管も細く、気持ちもまだそこまで追いついていないので、自己注射は中学校の修学旅行でできるようになればいいかなと考えています。

――ご両親の子育ての方針はどんなことでしょう?

母 目標は「子どもたちが自立できること」です。愛情はたくさん与えつつ、必要以上にかまい過ぎたり、押しつけないようにしています。男の子だから暴れもするし、青あざも作ります。ただ頭のケガにだけは気をつけて、いろいろチャレンジさせてあげたいですね。
 親しい友人がある時、「あなたのお家は『血の病気』をずっと引き受けているけれど、それがあることで、家族がとっても仲よしだし、助け合って生きてるよね、って。血友病ってきっと病気の名前じゃなくて“光” っていう意味だよ」って言ってくれました。
 私もこの子たちは、みな光を出していて、そのおかげで、実家のみんなもこの家も仲よしなんだなって…。兄が教えてくれたこともありますし、病院の方、近所の方、学校の先生、そして友だち、いろいろな人が「頑張りなさいよ」って私たち家族を応援してくれています。本当に“光” だなって思っています。

*ポート
血管内に薬を注入するため、皮膚の下に埋め込む医療機器。

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