ハロー! ドクター
大切なのは、お子さん自身に定期補充の重要性を納得してもらうこと

週に2〜3回注射を打つ定期補充療法を選択することは、物心がついた年齢の小児血友病患者さんにとって大変勇気のいること。太田記念病院で小児血友病患者さんを診察している嶋田先生は、患者さん本人が注射の意味を納得することが治療の継続性にもつながる、と説きます。

目次

太田記念病院 小児科 血液専門外来 非常勤医
嶋田博之先生

■PROFILE
1992 年、慶應義塾大学医学部小児科研修医、94 年、済生会宇都宮病院小児科勤務を経て、
96 年より国立がんセンター研究所放射線研究部リサーチ・レジデント。2000 年、慶應義塾大学医学部
小児科助手、2006 年より同大学医学部小児科専任講師。


非常勤専門医と常勤小児科医の連携で行う血友病治療

 太田記念病院では、
(1)小児血液専門医による月1回の外来
(2)それ以外の日の出血には常勤の小児科医が365日・24時間対応、
という体制を両輪に血友病治療が行われています。
整形外科や歯科、カウンセラーなどを含めた包括医療については年に1回、血友病の診療経験が豊富な東京の荻窪病院を受診するよう勧められています。
 治療の中核を担う専門医として招聘されているのが、慶應義塾大学病院の嶋田博之先生。3歳から13歳までの小児血友病患者さんに対して定期補充療法を中心として治療しています。
 診察では前回受診時から出血イベントがあったかの質問をして、出血があった場合は症状の経過を確認、またMRIによる関節や骨の変化の評価、症状や体重に合わせた製剤投与量の変更を検討します。家庭での定期補充の実施状況についても確認し、十分製剤投与されているにも関わらず出血が起こるときは血液検査でインヒビター出現の有無を確認します。また注射が適切に行われていない場合はその理由を尋ね、個々の理由に合わせた定期補充の重要性を改めて説明します。
 現在、ほとんどの患者さんが定期補充療法のおかげで安定した生活を送られています。そのためスポーツの制限はサッカーでヘディングはしない、野球ではヘルメットをかぶる、格闘技の試合は禁止するなど、頭蓋内出血を回避する最小限のルールにとどめています。

定期補充療法で患者さんの表情が一変

 嶋田先生が太田記念病院で血友病患者さんを診察するようになったのは、今から7年前。それまでは当時の一般的な治療法で、出血の都度病院で注射を打つ「オンデマンド治療」が行われていましたが、嶋田先生は引き継ぎを機に新しい「定期補充療法」への切り替えを試みました。
 「ところが導入には1〜2年かかりました。オンデマンド療法に慣れている患者さんや家族にとって、注射回数が増える定期補充療法は簡単には受け入れられないものだったのです」と先生は振り返ります。出血による関節障害のリスクについてレントゲン写真などを用いながら繰り返し説明、さらにはセカンドオピニオンに聞くよう勧めるなどし、徐々に患者さんの理解を得てきました。
 「特に本人が治療の重要性をきちんと認識することが大切です。幼稚園年長にもなると、話している内容は理解できますから。それで納得できれば、治療に主体的に参加する気持ちになります。先日も注射を逃げ回るお子さんとじっくり話し、最後はきちんと打つと指切りで約束しました」。
 定期補充を開始した患者さんは口々に「もっと早く始めればよかった」と話すそうです。月に10回以上出血を繰り返し、いつも暗い表情をしていた患者さんが見違えるように明るく元気になったのが忘れられないと、嶋田先生は言います。

注意するべきなのは、軽症患者さん

 最後に嶋田先生は軽症患者さんに向けてアドバイスをくださいました。
 「軽症患者さんの場合、通院の機会すなわち情報を得る機会が少ないため、本来なら早急に製剤を打つ必要がある関節出血をねんざと勘違いするケースもあります。適切な治療をしないでいると関節が弱くなり、同じ部位で出血を繰り返します。そして軽症なのに健康状態が悪くなることがあるのです。関節の痛みや腫れが起きたときは、アザの有無に関わらず、出血を疑ってすぐに血友病のかかりつけ医に相談してください」。

太田記念病院 病院長 兼 小児科部長 
佐藤吉壮先生のお話

■PROFILE
1977年   慶應義塾大学医学部小児学教室入局
1984年   総合太田病院(現 太田記念病院)へ赴任
2012年10月より太田記念病院院長

 群馬県東毛地区の基幹病院としての役割を果たす当院は、あらゆる疾患に対応する必要があります。そこで当院内に専門医がいない場合は、非常勤の専門医を外から招いて専門外来を開設しています。小児の血友病患者さんは小児血液が専門の嶋田先生に診察をお願いしています。
 嶋田先生の診療は月1回ですが、診療日以外の出血にも適切に対応できるよう、電子カルテのトップには製剤投与量などの申し送り事項が記載され、どの小児科医でも嶋田先生の指示を引き継げるシステムになっています。
 定期補充療法を導入する際の家庭輸注の指導は予約制ではなく、患者さんが出血で来院したタイミングを利用して、その時診察する常勤小児科医や看護師が行います。まずは見学で手順を示し、自信がついてきたら実際にご家族に打ってもらう流れです。マニュアルを作って誰もが指導できる体制を整えました。
 昨年救急救命センターに指定された当院は、365日・24時間体制で必ず小児科医1名が待機しており、いつでも出血に対応できます。嶋田先生と常勤小児科医とのよい連携で、小児血友病患者さんにとって安心できる治療を提供し続けたいと考えています。

富士重工業健康保険組合 太田記念病院
〒373-8585
群馬県太田市大島町455-1
TEL:0276-55-2200 FAX:0276-55-2205
URL http://www.ota-hosp.or.jp/
2012年6月に新築移転したばかりの太田記念病院。開院とともに東毛地域で初の救命救急センターに指定され、昨年度は年間約6000台の救急車と26台の救急ヘリコプターを受け入れるなど、地域医療の中核を担っています。

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