海外レポート
世界血友病連合(WFH) 第30回学術集会参加報告

目次

荻窪病院血液科 長尾 梓先生

はじめに

 こんにちは。荻窪病院の長尾梓です。2012年7月8日〜12日にフランス・パリにて開催された世界血友病連合(WFH)の第30回学術集会に参加してきましたので報告します。
 7月のパリではセーヌ川沿いに人工ビーチができると聞いて、そちらのレポートもしたいと思っていたのですが、東京の猛暑からは想像もできないほど寒い日が続き、コートを着込むパリジャンもいるほど。雨も多く、ビーチレポートどころではありませんでした。そんなパリで面白いと思ったのが「レンタル電気自動車」です。数年前からエコに敏感なパリジャンは街の至る所にスタンドがあるレンタル自転車を乗りこなしている、というのは知っていたのですが、今回街中でスタンドの電源につながっている電気自動車を発見!週15ユーロの登録で30分、7ユーロの料金でレンタルできます。今後パリに行かれる方は利用してみては?!
 さて、学会の話。世界各国から血友病患者さんや医療関係者などが集まり、血友病の治療、研究など様々な最新の発表・討論が行われました。FacebookやTwitter上でも議論が行われたようです。最大の話題は、時代の流れを受けて、長時間作用型凝固因子製剤です。また、遺伝子治療、インヒビターの治療、C型肝炎の治療なども目立った話題でした。今回はトピックとして作用持続型血液製剤と、私の発表テーマでもある血友病患者さんの高齢化問題について、ご紹介します。


パリの街角で目を引いた「レンタル電気自動車」。この写真は、街中にあるスタンドで電源につながっているところ



長時間作用型凝固因子製剤

 荻窪病院でも臨床試験が進行中の長時間作用型凝固因子ですが、多数の製薬会社が様々な製剤を開発中です。試験結果がよければ1〜2週間に1度の注射で定期投与がすむようになるかもしれません。血液中で製剤が代謝される時間を延ばすために、今までの遺伝子組換え型製剤に半減期を長くする成分(グロブリンの一部やアルブミン、PEGなど)を結合するというのが、基本的なやり方です。今回は作用がどれだけ持続するかという研究発表の他にも、結合させる成分の安全性に関する発表もいくつかありました。現在、開発進行中の薬なので、我々医療者としても今後しっかり見極めて患者さんに紹介していかねばならないと感じました。

高齢化問題

 血友病の治療が飛躍的に改善した現在、血友病患者さんの寿命は一般男性とほぼ同じになるまで長くなりました。ところが今までご高齢の血友病患者さんが少なかったために、医療関係者も十分な経験をもっていません。血液が凝固しにくいということは、生活習慣病、関節症、痛み、感染症、がんなどにどんな影響を与えるのでしょうか。たとえば血友病患者さんでは少ないと予想される心筋梗塞(心臓の動脈の硬化が進んで血栓を作る病気)について海外からいくつも報告がありました。また、血友病患者さんの骨密度が一般成人よりも低く、骨折のリスクが高いと思われます。骨密度は生活習慣病にも関わっており、メタボには気をつけたいですね。他にもこの議題で特に印象的だったのは、スウェーデンの取り組みでした。そこでは血友病患者さんたちが集まって、高齢になった時のチェックリストを自分たちで作成しようとしているところでした。出来上がったらWeb上で公開されるとのことなので、楽しみにしていようと思います。

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