海外レポート
血友病治療の最先端 オーストラリアの血友病治療

目次

はじめに

日本から約7400km離れ南半球に位置しているオーストラリアは、季節が日本と逆です。オーストラリアには日本からの移民を含む多種多様な人種が暮らしていますが、大部分は白人です。
今回は、オーストラリアの血友病治療についてInstitute of Haematology Royal Prince Alfred HospitalのScott Dunkley先生にご紹介をいただきました。

広大な国土に16の血友病センター

 ABDR(Australian BleedingDisorder Registry オーストラリア出血異常症登録)によるとオーストラリアには、1900人を超える血友病A患者さんと450人の血友病B患者さんがいます。そのうち血友病A患者さんの35%と血友病B患者さんの20%が重症血友病です。オーストラリアの人口は約2200万人です。
 オーストラリアは、広大な面積の領土を有していて主要な都市は湾岸沿いに位置しています。歴史的には1つの州に1つの小児科と成人向けの血友病センターがありました。しかし現在ではシドニーのような大きな都市では、いくつかの血友病センターがあります。財源とリソースの集中化ということが社会保障には必要ですが、オーストラリア全体では、16の血友病センターがあります。
 ほとんどの患者さんは自宅で自己注射をしています。血液凝固因子製剤については“宅配システム” もしくは地域にいるお医者さんから受け取っていますが、主要な手術などは血友病センターのみで行われています。
 オーストラリアの治療は、患者さんにとってとても良心的なシステムになっています。製剤の継続的な使用の見直しなどに対して患者さんに義務はありません。成人の患者さんは、最低年に1度血友病センターで治療の見直しをし、小児科の患者さんは最低6ヵ月ごとに診察を受けます。新生児の患者さんは、10回の注射ごとに診察をします。血友病の患者さんはABDRを通じて人口分析データに協力することが義務付けられています。
 オーストラリアの医療保険は、納税者による資金をもとに、政府が完全主導している“Medicare”という基金です。この基金は血友病治療と薬剤を含んでいます。とても患者さんにやさしい基金ですがコミュニティの費用負担は増大しています。
 血友病患者さんが使用するすべての薬剤について、遺伝子組換え、血漿由来、定期補充もしくは、出血時投与などに関係なく、費用に上限はありません。
 バイパス製剤もインヒビターのある患者さんに提供可能です。

患者会と血友病センター長組織が機能

 専門的な意見や経験などを共有することは患者さんと医療関係者双方に大変重要です。
 オーストラリアではH F A(haemophilia foundation ofAustralia)という全国規模の患者会がオーストラリア中の患者さん、ご家族を支援し結びつける役割を果たしています。オーストラリアと異なって複数の血友病センターがあることは、稀な病態に対して専門性が損なわれる危険性があります。オーストラリアでは16名のみの血友病センターの施設長が存在しますが、我々はすべてAHCDO(Australia Haemophilia centredirector's organization 豪州血友病施設長組織)を通じて協力し合っています。私たちの組織には準会員もいて、血友病への興味とかかわりを他の医師へ行う教育と活動をしています。AHCDOは看護師、社会活動、物理療法のグループなどと同様にHFAと密に連絡を取っています。
 距離が遠いなどの地理的な問題があったとしても、(外科手術やインヒビターの治療などの)ある程度専門化した治療は主要都市や大学の附属病院にある血友病センターに限定することがより安全と言えるのではないでしょうか。

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