“ファイン”な仲間たち[ 体験談 ]小児の患者さんとご家族・成人の患者さん

目次

〜小児の患者さんとご家族の体験談

製剤を持って行けば、家族旅行もできる。
定期補充を始めてから、気持ちにゆとりが生まれました。

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相馬さやかさん(34歳)主婦
  裕 斗くん(4歳)

今年の春、幼稚園に入園した相馬裕斗くん(4歳)は、定期補充を始めてちょうど1年。
診断を受けた直後は落ち込んだこともあったお母さんのさやかさん(34歳)ですが、定期補充に切り替えてからは、気持ちにゆとりが生まれ、物事を前向きに考えられるようになったそうです。

家族旅行を目標に、注射の練習を開始。しっかり者の息子に反省させられることも

 息子には生まれつき、小さな傷でも出血がじわじわと続くことがあったので、なんとなく「血が止まりにくい病気なのかもしれない」とは思っていました。血友病の診断を受けたのは生後10ヵ月の頃でしたが、先生から病名を告げられたときにも大きなショックはなく、「あー、そうか」と漠然とした気持ちだったことを覚えています。
 ですが、主人が仕事に出かけ、自宅で息子と二人きりになるとさすがにつらい気持ちになることが多かったです。周りの子どもと比べてしまい、「何でうちの子だけが病気で生まれてきたんだろう」と一人でメソメソしていました。息子に読み聞かせようと、病院でもらった血友病の絵本を手にとったまま、気がつくと涙を流していることもありました。主人とこの病気について話すことは、あまりありませんでした。同じような気持ちでいるんじゃないか、とお互いに気を遣っていたのかもしれません。
 息子はちょうどハイハイやつかまり立ちをしていた時期でしたので、安静にさせることがとにかく大変でした。右足のくるぶしが出血しては、注射とギプスの繰り返し。2歳になるまでは3ヵ月に1回くらいのペースで出血していたと思います。「この足がいやだ」と自分の足をたたいて、よく泣いていました。しまいにはギプスをつけたまま這って移動していましたけれど、あまりうるさく言っても仕方がないと思っていたので、大目に見ていました。
 定期補充を始めたのは息子が3歳になる頃です。2011年の4月から3ヵ月間、私が週2回病院へ通って注射の練習をしました。看護師さんの腕に実際に針を刺して練習させていただくのですが、病院に行くのは正直、気が重かったです。でも、注射ができるようになったら妹が住む横浜へ泊りがけで行く、というのを目標にがんばりました。今では息子も、注射の意味をわかっているのでしょう。私が注射の準備をしていると飛んできて、いすに座ってマットの上に腕を載せ、待っていてくれます。「注射をしたから元気に遊べるようになるね」などと言うこともありますし、少し失敗したときには「お母さん、説明書見てごらん」と注射の説明書をテーブルに出して見せられることもあります(笑)。子どものほうがしっかりしているので、見習わないといけないですね。

定期補充を始めて、気持ちが前向きに。親としての責任も実感できるようになった

 足の調子が悪かった頃はおとなしかった息子ですが、定期補充を始めてからは活発になり、周りの人にも「元気になったね」と声をかけられるようになりました。高いところからジャンプをしようとしたりしたときには「また足が痛くなるよ」と声をかけますが、普段の動きはあまり制限していません。けがをしたらしたで仕方がないですし、息子も自分でわかっていると思います。
 今年の春には、幼稚園の入園を機に週2回だった注射を週3回に変更しました。主治医の先生からは様子を見て、というお話もありましたが、出血したら幼稚園も休まなくてはならなくなってしまうので、私の希望を伝えて回数を増やしました。入園前、幼稚園に病気のことを話しに行ったのですが、「こういうときはどうしたらよいか」という質問をたくさん受けました。私自身、聞かれて初めて気づいたことがたくさんあったので、主治医の先生と相談してマニュアルのようなものをつくり、幼稚園に提出しておこうと思っています。
母親として、主治医の先生、幼稚園の先生の両方としっかりコミュニケーションをとっておかなければいけませんね。
 定期補充を始めてからは、気持ちにゆとりができたとでもいうのでしょうか、昔のように落ち込むことはほとんどありません。ほかの人と話をしていて思うことですが、誰しもそれぞれ何かの悩みは持っていますよね。わが家の場合は病気だから「治療」という解決方法がある。私たちはいい方なのかな、いい方にとらなくては…、と受けとめられるようになりました。
 息子は、警察官や消防士などたくさんの夢を持っているようです。将来、やりたいことをのびのびとできるように、今は私がしっかりと守ってあげなくてはいけないなと思っています。

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〜成人の患者さんの体験談

まじめに治療に取り組むことで、体も気持ちも楽になる。
定期補充を再開し、リハビリを始めて、改めて実感しました。

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三枝 良さん(21歳)

学生大学で福祉を学んでいる三枝良さんは、卒業を来年に控えた大学4年生。将来はソーシャルワーカーになりたいという夢を持っています。
まじめに続けていた定期補充を、一度やめてしまったという経験を持つ三枝さん。
注射を再開した今、「継続することで得られる価値」を改めて感じていると言います。

一度はやめかけた定期補充。再開させてくれたのは、先生の「叱責」

 私が定期補充を始めたのは、小学校に入学する頃です。当時の両親はとにかく過保護で、小学生の頃は何もやらせてもらえませんでした。実際は、こっそり友だちとサッカーをやったりもしていたんですけれどね(笑)。
 小学校の卒業を機に、自分で注射をするようになりました。母からは「中学生になったら好きなことをしてもいい」と言われていましたので、中学校では卓球部に入り、友だちと同じように練習していました。出血もそれほど頻繁には起こらず、比較的順調に生活ができていたと思います。
 ところが、高校に入学してから、それまできちんと続けていた注射を怠るようになりました。決定的な理由があったわけではなく、「なんとなく」やらなくなってしまった、という感じです。高校でも卓球を続けていたのですが、厳しい練習で筋肉がついたせいか、あまり出血しないようになっていて、それが注射から遠ざかる原因になっていたのかもしれません。注射をしていないことは、主治医の先生も、両親ももちろん気づいていました。注意を受けてはいたのですが、いつも聞き流してしまっていました。
 しかし、そのうち徐々に、足首が腫れる頻度が増えてくるようになりました。大学1年生の秋、出血が原因で入院をしたのですが、そのときに主治医の先生に“ガツン”と怒られて。自分でも「やらなきゃいけないな」と思っているところに怒られたので、少しふてくされはしましたが、再び定期補充を始めることにしました。それからはずっと注射を続けています。足が腫れてしまったら学校を休まなくてはならないし、大学は高校と違って先生が出欠の管理をしてくれるわけではないので、欠席が多いと留年してしまいます。大学生になって自己責任の範囲が広がったことは、プレッシャーになりながらも、きちんと注射をするいい動機付けになっているように思います。

自らリハビリもスタート。
不安がなくなり、勉強やサークル活動に全力投球できるように

 定期補充を再開してからは出血の回数は減りましたが、やはりブランクがあったせいか、ひざの痛みが続いていました。そこで自分の気持ちをリセットして治療に取り組もうと思い立ち、昨年の秋に体の状態をすべて検査し直しました。主治医の先生との相談の結果、現在は週1回のリハビリも行っています。社会人になったら頻繁にリハビリに通うこともできないので、今のうちに筋力をつけて出血を減らせるようにしておこうというねらいです。
 大学に入学してから、定期補充の再開とリハビリの開始、二つの大きな変化があったということになりますが、そのきっかけになったのはどちらも体の不調。やっぱり、まじめに治療するべきだな、と思います。私のように痛い思いをして気づくのも悪くはないですが、関節症も出てきてしまいましたので、中断している人には早く再開することをお勧めします。
 現在は、大学でソーシャルワーカーを目指して勉強しています。ソーシャルワーカーは仕事の幅が広い職業ですが、私は中でもMSWかPSWになって、病気や障害を抱えている人の支援をしたいと考えています。血友病であることは様々な点で有利になるかもしれません。ただ、心情面では人よりも痛みやつらさがわかる分、利用者に主観を押しつけてしまうのではないかという不安もあります。将来は、利用者が求めている支援を客観的に見極められるソーシャルワーカーになりたいと思っています。
 大学ではサークルの仲間と1泊でキャンプに行くこともあります。出発の朝に注射をしていけば、特に問題なく過ごせますし、卒業旅行ではもう少し長い旅行に行くことになるでしょう。いずれは海外旅行にも行ってみたいです。 普通の人と同じように運動できるというのも定期補充のメリットですが、何よりも大きいのは「安心感」。注射さえしていれば「足が腫れてきたらどうしよう」という不安に駆られることもないですし、心情的に楽になれます。気持ちの面の負担が軽減されるというのは、私の生活の中で、とても大きな価値になっています。

MSW (Medical Social Worker /医療ソーシャルワーカー):医療機関などで、患者の経済的、社会的、心理的な問題の解決を行う
  PSW(Psychiatric Social Worker /精神保健福祉士):精神障害者に対する社会復帰や社会参加の支援を行う

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