保因者(Carrier)

保因者(Carrier)とは

保因者とは、血友病のようなある特質を表す遺伝子の欠損があっても、その特質が表面にでていない人を指します。
遺伝子は体の青写真のようなもので、髪の色、眼の色、皮膚の色などの特質を決めるタンパク質を産生する指令を体に出すことができます。
遺伝子はまた、特定の機能を持つタンパク質を産生するよう、手引きもします。こういった遺伝子に欠損があると、体は機能障害を起こしてしまいます。
血友病患者さんには体に血液凝固因子をつくる命令を出す遺伝子に欠損があるので、血液凝固障害が生じるのです。

ヒトは染色体と呼ばれる長いDNA片上にグループ分けされた50,000から100,000個の小さな遺伝子を持っています。
体細胞は46個の染色体があり、23対に配列されています。
血友病を起こす血液凝固に関する情報を与える遺伝子対は、新生児が男児か女児かを決定する遺伝子と同じ染色体の上にあります。
これらの遺伝子は"性染色体"と呼ばれています。
血友病を起こす遺伝子は性を決定する遺伝子と同じ染色体対上にあるので、血友病の発現は新生児の性別に深い関わりがあります。その過程は次の通りです。

  • 精子が卵子に授精すると、受胎が行われます。
  • 精子は染色体23個を持っていて、これは父親の遺伝子構成の半分にあたります。
  • 卵子もまた、23個の染色体を持っていて、母親の遺伝子構成の半分にあたります。
  • 精子が卵子に受精すると、新しい細胞の染色体の数は、父親と母親から半分ずつもらい受けるので、あわせて46個になります。
  • 卵子は必ずX染色体を有しています。(ヒトは少なくとも1個のX染色体を持っています)
  • 精子はX染色体か、Y染色体を1個持っています。
  • 精子と卵子の両方にX染色体がある場合には女性になります。女性はXXです。
  • 精子にY染色体があり、卵子にX染色体がある場合には男性になります。男性はXYです。
  • 血友病の遺伝子はX染色体の上にあります。
  • 血友病の素因遺伝子を持つX染色体(Xhと呼びます)が正常なX染色体と結合すると、血友病の遺伝子を持つ女の子が生まれます(性染色体はXhXになります)。
  • 血友病遺伝子(Xh)を持つX染色体がY染色体と結合すると、血友病を持つ男の子が生まれます(性染色体はXhYです)。

母親が保因者の場合、全X染色体のうちの半分は血友病遺伝子を持っていますが、もう半分は正常です。
この母親はおそらく血友病の症状は示さないでしょう。というのも、1個の正常なX染色体が血友病遺伝子を補うに十分な凝固因子を血液中に産生させることができると考えられるからです。
しかし、彼女が自分の子供に血友病遺伝子を含むX染色体を譲り渡すことはあり得ます。
男の子が母親からこの染色体を貰い受けると、ただ1個のX染色体が血友病遺伝子を持っているので彼は血友病になります。
男の子は父親のY染色体をもらっているため血友病遺伝子を補うための正常X染色体を持っていないからです。

女性保因者の子供はすべて、血友病X染色体を受け継ぐ可能性が50%あります。
女性保因者の娘は彼女自身保因者になる可能性が50%あり、その可能性は彼女が正常なX染色体をもらうか、血友病遺伝子をもつX染色体をもらうかにかかっています。

女性保因者の息子は、もし彼が母親から血友病遺伝子を含むX染色体をもらい受けたら血友病になります。彼が血友病の保因者ではない女性との間に子供を持つと、娘は血友病遺伝子を持つX染色体を受け継ぎ、キャリアになります(彼女達は全員XhXです)。それは彼のX染色体は血友病の遺伝子を持っているからです。しかしながら、彼の息子は、Y染色体を譲り受けるので、血友病にはなりません。Y染色体は血友病遺伝子を持っていないからです。

血友病の男性がキャリアでない女性との間に息子だけを持つと、直系の子孫から血友病は消えます。

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