冊子「Friends」

【血友病体験談】自分でできる?家庭治療・自己注射〜開始時期1

いつからしてる、家庭治療・自己注射【1】

あわてなくても…

家庭注射は子どもが4〜5歳ころでした。確かに病院に行く回数が減ったこと、予防ができて突然の出血が少なくなったこと、出血時、早い対処ができ治りも早いなど、よくなったところは山ほどあります。しかし、うちの場合、小さいころは本当に血管が見えにくく入りにくかったので、親子で強いストレスを感じました。失敗して病院に連れて行く時は、家でしないで、はじめから病院に連れて来ればよかったと後悔しました。急いでいてセッティングを間違えたりもしました。その上、下の子がそばにいてやりにくいこともありました。サマーキャンプなどで練習したり、病院での注射は家でしていない血管にしてもらったりして、その時期を何とかしのぎました。注射をしてくれる病院が遠いと家でできた方が便利なのは確かですが、あまり早くからあせって家庭投与をしようと頑張らなくても、個々で時期は違うと思うので、できる時から始めていいと思います。今、子どもは7歳です。 母(7歳のお子さん)

選択の余地はなかった

息子は9歳です。家庭注射は幼稚園頃から始めたかと思います。遠足直前や、急な痛み等、うちたい時に即できるので良かったです。注射に慣れるまでは、近所の小児科の処置室を借りてやりました。どうしてもできない時はナースに代わってもらったりもしました。慣れてからも、自宅でどうしてもできない時は小児科にそのまま薬を持ち込んでしてもらいました。家庭治療に関しては病院が休みだったり、夜間救急の先生が注射できなかったり、遠足で長時間歩く予定だったりした時は、自分でできたら楽だとずっと思っていました。しかし左足首関節出血が多くなったので、必然的にやらなくてはならない流れで、やることになりました。やらない選択肢はなかったように思います。その様なことが無いのなら、無理に始める事も無いのではないでしょうか。 母(9歳のお子さん)

何でもトライ

家庭注射は1歳ころからはじめました。いちいち病院へ行っていた手間と時間が省け、予防もしているので、痛くなることは最低限に防げていると思います。とは言っても、子どもが注射をしなければいけないと自覚するまでは、注射をする度に泣いて暴れるので大変でした。分かってきたのは幼稚園前頃でしょうか。とにかく失敗しないことに神経を集中していました。現在9歳の我が家の子どもは、注射をして何でもやってみるというのが定着しており、痛くなるのが嫌なので、注射を率先して嫌がらないことが何よりもよい点だと思います。それとインヒビターや他の症状がないから言えるのかもしれませんが、病気であることをあまり大変なことだという風に思わずに、誰でも持病のひとつぐらい持っているし、もっとひどい病気の人がいるので、製剤(凝固因子製剤のこと、以下製剤と記す)を補充すれば何でもないという病気はありがたいといつも言っています。小学校でも普通に生活しています。 母(9歳のお子さん)

工夫も苦労もしました

自己注射は10歳頃からはじめました。始めの頃は、成功率が低かったので、1回の製剤投与の際、何度も何度も注射をする羽目になり、注射を嫌がり、定期投与をなかなか開始できませんでした。そこで、注射の前に手をお湯に入れて温めさせ、注射はいつも手の甲にしていたので、注射の前に手をダラっとさせて、心臓より下げさせるなどの工夫をしていました。でも自己注射ができるようになって、すぐに製剤を投与できるので、早く処置できるようになって良かった。また自分で注射が出来るので、学校生活の不安が無くなって、活動的になった気がします。息子も中学校生活にも慣れ、毎日部活でクラリネットを吹いて、唇を腫れあがらせています。注射を始めた頃は、親も本人も痛いのでは、と思い、針を刺す手がゆっくりになってしまいますが、そこは思いきって勢いよく刺して下さい。本人曰くその方が痛みが少ないようです。失敗は成功のもと、初めは成功率が低くても、失敗があってこそ、家庭輸注成功への道です。家庭での輸注が出来ると、気持ちにゆとりが出来て、行動範囲も広がりました。これから家庭輸注を始める方、緊張のあまり怖い顔にならずに、楽しい事がたくさん待っていると思って家庭輸注の練習して下さいね。こんな文章で激励になるでしょうか? 母(12歳のお子さん)

平気だよ

今、14歳です。自己注射をしています。小学5年生の時の林間学校で必要になったから、それに向けてできるようになりたいとはじめました。はじめて良かったことは、母親の家事がはかどるようになったこと、痛みを自分で調節して最小限にできるようになったことです。大変だったのは予防注射を忘れて学校に行き、帰る頃までに足のどこかが痛くなることがあったことと、朝の時間の余裕が少なくなったことです。宿泊行事で必要になるため、注射ができないとその楽しみを味わえないと思えば頑張れるはず!!!そして、友達ができれば、注射練習中の入院も楽しいから気軽に自己注射の練習ができます!! 本人(14歳のお子さん)

その母から一言。
今回、息子の言葉を見て、「母の朝の忙しさが少し減ったこと」を良かったことと思っていることを知りました(涙)。全く無かったわけはないと思いますが、息子は自己注射に対する不安感が少なかったようで、「不安は?」と訊いても「大失敗しないし、スランプもない!!!」と即答されました(苦笑)。う〜ん、ちょっとはあったのかもしれませんが、私の記憶にも全く残っていません。
おかげで私がスランプだった時の気持ちは全く理解してもらえず、未だに「お母さんにやってもらってた時は痛かったなぁ〜」といじめられます。
何とも前向きな男で、私も精神的にはとても楽をさせていただいています。なので、私も息子も「自己注射を嫌がるお子様」に対しての的確なアドバイスは難しいんです。
今、本人が困っていることは、朝の注射を忘れて寝坊してしまうこと、数日間忘れ続けると足首などどこかが痛くなること、の2点だけのようです。 母(14歳のお子さん)

やはりめげる

45歳の私ですが、実は昨年やっと注射を覚えました。はなから自分では出来ないとずっと思っていたので、病院で勧められてもずっと遠慮していましたが、今回、身内からやってみるように後押ししてもらったら、頑張って出来るようになりました。出血した時注射できるので助かりますが、やはりスランプで何回も針を刺す時は、少しめげます。 本人(45歳)

腕にはうてなくて

注射は病院でやるもんだと思ってて、中学校の時に骨折して現在の病院に転院してから、自己注射というのを知って、勧められた。だから母親と自分が習ったのは同時だった。当時は僕の腕も細くて、病院で散々注射したものだから、腕に注射できるところはなくなってて、両足首の内側にやっていた。そこは痛いとよく聞いていたが、自分の場合はそれほどでもなかったと思う(人の痛さは分からないが・・・)。そのうち腕も太くなって、血管も使わないでいるうちに、腕の血管にも入りやすくなって、今はもちろん腕だけ。母親には利き腕が出血した時にやってもらっていたが、それも1〜2年で自分だけになった。 本人(40歳)

やってよかった

地方在住61歳です。自己注射をはじめたのは28歳ころからです。自己注射※をはじめてから、生活が一変し、最終的に就職が可能になりました。私の場合は血管が出るので、自己注射は予想よりずっと簡単で苦労することは一切ありませんでした。皆様も迷わず一日も早く開始されることをお勧めします。 本人(61歳)

※編者注→濃縮製剤による自己注射が健康保険で認められるようになったのは1983年です。

Column1

「血液凝固異常症のQOLに関する研究」の結果からみえてきたこと
みんな在宅注射はどうしている?

他の人は皆、在宅自己注射療法をしているのだろうか、いつから家庭治療を開始しているのか、自分はいつから自己注射を開始すべきなのか。病院スタッフもよく尋ねられるし、母親の会でも毎回の話題のひとつです。早期の定期補充療法を勧める考え方では、関節障害にならないために赤ちゃんのころから定期補充療法を始めたほうがいい、となるのでしょうが、小さい赤ちゃんの腕に週3回も針を指すのは技術的にも、心情的にも厳しいものがあります。ましてポート設置のための手術をするなど、親にしてみれば苦渋の決断でしょう。結論を言えば、出血の具合、インヒビターの有無、状態の悪い関節の有無、血管の見えやすさ、親や子どもの覚悟などに左右されますので、一概にいつから家庭治療を開始したら良いとは言えません。
でも、そう言ってしまうとあまり参考になりませんよね。そこで「血液凝固異常症のQOLに関する研究」の平成22年度調査報告書を見てみると、在宅自己注射療法は調査に回答した血友病患者642名中504人(78.5%)が行っており、練習中が6人(0.6%)でした。逆に言えば約20%の人が行っていない計算になります。その理由は、出血がほとんどない(36.6%)、軽・中等症なので(33.7%)、まだ小さいので(23.8%)などで、医師に勧められたが不安あるいは自信がないと回答したのは、20.8%に過ぎませんでした。
つまり、ある程度の年齢で必要があってもできていない人は全体の5%以下となります。ちなみに前回、平成19年度の調査報告書では、中等〜重症の人は8-9割が在宅自己注射療法を行っているのに対して、軽症の人は半分しか行っておらず、全体として6-7割でした。さて、次にいつから開始するかですが、グラフから分かる通り小学校入学の頃には8割が在宅自己注射を行っています。最初に書きました通り、在宅自己注射の開始については個人差が大きく、これを読んだからと言ってあわてないでください。親がやるにせよ、自分がやるにせよ、無理やり在宅自己注射を進めるのは逆効果です。実際、在宅自己注射をやめたいと回答した方も3.3%いました。しかし、スランプは必ず乗り越えられますし、出血を自己管理できるようになった患者さんのほぼ全員がよかったと言っています。気長に取り組んでください。

在宅自己注射を行っている患者の開始年齢 年齢別の在宅自己注射法施行率
Column2

「血液凝固異常症のQOLに関する研究」の結果からみえてきたこと
みんな定期補充療法はどうしている?

定期補充療法についてはどうでしょうか。週1回以上の定期補充療法をしている人は過半数の55.3%ですが、特に2歳から10歳代にかけては70%を越える子どもが実施しています。成長期の患者においては定期的な製剤投与が標準的な治療になってきているのではないでしょうか。また2歳未満で定期投与を開始する家庭も1割強となり、以前よりは一次定期補充療法(関節出血をおこす前から定期補充療法を行い、関節機能を保全するやり方)が浸透してきていることが窺われます。ちなみに中心静脈カテーテルなどの留置カテーテルを用いている人は全体の4.2%程度で未だ一般的とは言えない状態です。困難もあります。注射の失敗(54.5%)、注射をする時間帯の朝は多忙(27.6%)、病院への通院が大変であった(25.7%)、子どもが注射をいやがった(16.9%)などの結果は想像に難くありませんね。何度も言いますが、個人による状況の差が大きいので、主治医と相談して焦らずに決めてください。

定期補充療法を行っている患者の開始年齢
年齢別の定期補充療法施行率
Column3

「血液凝固異常症のQOLに関する研究」の結果からみえてきたこと
血液凝固異常症のQOLに関する研究とは?

血友病患者さんと家族の生活の質の向上を図る目的で、数年一度に調査が行われています。これは厚生労働省の科学エイズ対策研究事業「血友病の治療とその合併症の克服に関する研究」の分担研究として、血液凝固異常症QOL調査委員会が担当して実施し、報告書にまとめられています。平成23年2月に発行された「血液凝固異常症のQOLに関する研究」調査報告書が最新のものです(平成23年7月現在)。報告書では、なかなか知り得ない他の患者さんの生活の一端が見られ、多くの患者さんと家族が参考にしています。それだけでなく、血友病専門医らが、国に対策を求めたり、医療体制を考えたりする際の出発点にもなっています。

参考:
Friends「自分たちでしよう」編(小島賢一)(バクスター)