冊子「Friends」
【体験談】血友病のいろんな「職場・仕事」
〜しんどいけれど、運輸・流通・販売

しんどいけれど、運輸・流通・販売

元スーパー店員
雑貨や生鮮食料品は地獄。一人で米600kg分を積み替えたりした。20代の人でももたずに辞めていく。年末・年始は特に数時間の睡眠で休みもなかった。店内で魚や肉をさばくこともあって切り傷も多かった。製剤量はすごく増えたし、関節は痛めたし、もうこりごり。

清涼飲料配送
担当区域内の200以上の自販機に飲み物を補充する仕事。ビル内に設置されている機械にジュースを持ち上げて、補充するのが一番辛い。どうしても腰や足首に負担がかかる。痛いときもかばいながら何とか仕事をしているが、製剤を打って効かないときもあって、どこまで続けられるか分からない。夏場は飲み物の補充量や回数も多いから大変です。

流通仕分業派遣社員
出血はするが、普段は他の人並みにやっている。頼まれると古株なのでついやってしまうし、無理しがち。最近は年に一回ぐらい大きい出血をどかんとやって入院することになってしまっていた。そんな状態を見て、会社の方で分かってくれて配慮もしてくれるが、実際に現場へ出れば忙しいので、つい無理をするのは同じ。

不動産販売
お客様を乗せて物件を紹介するだけですから、ほとんど困ることはありません。躓いて足先に出血した時に、内緒で自宅に戻って打ったことはありましたけど、それぐらいかな。

元トラック運転手
ほとんど休みなしに働いた。というか働かされた。出血は多くて、無理を重ねるうちに結局、続かなくて辞めることになった。休みが定期的にとれる仕事でないとできないと思う。

トラック運転手
覚えがないのに、あるいは予兆なしに出血することがあるので不安です。仕事はトラック自体を運送するのですが、一度だけ納入後、出先で出血して、電車で地元に帰った頃には歩けなくなり、妻に迎えに来てもらったことがありました。以来、製剤を持ち歩くようになりましたが、車内でやれるので、楽ですね。

Column4
「血液凝固異常症のQOLに関する研究」の結果からみえてきたこと
会社で出血した時はどうしている?

血友病患者さんと家族の生活の質の向上を図る目的で、数年一度に調査が行われています。これは厚生労働省の科学エイズ対策研究事業「血友病の治療とその合併症の克服に関する研究」の分担研究として、血液凝固異常症QOL調査委員会が担当して実施し、報告書にまとめられています。
平成23年2月に発行された「血液凝固異常症のQOLに関する研究」調査報告書が最新のものです(平成23年7月現在)。
報告書では、なかなか知り得ない他の患者さんの生活の一端が見られ、多くの患者さんと家族が参考にしています。それだけでなく、血友病専門医らが、国に対策を求めたり、医療体制を考えたりする際の出発点にもなっています。ここでは最近の報告書の中から、仕事について皆さんの疑問に答えられるところを見てみましょう。

仕事中の止血 職場で出血した時の治療
Column5
「血液凝固異常症のQOLに関する研究」の結果からみえてきたこと
老後の暮らしと医療について

半世紀前までは、10歳まで生きられない、成人になるのは稀、と言われていた血友病も、今ではほとんどの方が平均余命に近いところまで生きられるようなりました。このままいけば「普通と同じく」天寿を全うする時代になっていくことでしょう。
しかし、その分「普通の人と同じく」がん、高血圧、糖尿病の心配もしなくてはならなくなりました。加えて、目が悪くなったら製剤の自己注射はできるのだろうか、認知症になると出血時の管理ができなくなるのでないか、人一倍関節を傷めているので、足が不自由になったら独身で通した老後の面倒はだれがみてくれるのか、といった不安も大きくなってきました。
おそらく皆さんが現在通っている病院は、急性期型の病院といわれているところです。ご存じとかは思いますが、そこは数週間から数か月程度で回復する見込みのある人のための医療機関です。寝たきりなどの状態になると、療養型の病院に入院することになります。過去、療養型病院での医療費は定額となっていたため、血友病患者さんのように高額な薬剤を使う方は入院できない状況もありましたが、多くの人のご尽力で、現在は血友病に関しては高額な薬剤を使っても病院に負担がかかる状況は解消されました。
しかし問題は残っています。それは血友病と関係なく、そもそも療養型病院はすぐに入院できないことが多いこと、加えて血友病医療に関しては全く経験がないということです。この点については医療者と患者さんが一緒に訴えていかないと、事態は改善されないでしょう。病院ではない施設はどうでしょう。医療者が常駐していなくてもよく、必要に応じ医療機関に通えばよい程度であれば①養護老人ホーム②ケアハウスや軽費老人ホームなどが選択肢に入ってきます。①は所得制限(所得の高い人は入れない)があること、入所待ちが長いことが欠点ですが、生活の面倒はみてもらえます。②については介護保険が適応になるかどうかの違いはありますが、月13万円からその倍程度の費用で入所ができ、やはり生活の面倒をみてもらえます。

社会人に対する経済面での不安

※「血液凝固異常症のQOLに関する研究」
平成22年度調査報告書 25ページより

社会の流れとして、こうした施設への入所よりも在宅でのケアを優先する動きがあり、ご本人も、一人で何とかやりたい、自宅で生活したい、などの希望をお持ちの方も少なくありません。その場合は訪問看護、訪問リハビリテーションなどを利用して、輸注を助けてもらったり、関節状態の維持を図ったりしながら生活し、一部の家事はヘルパーさんにお願いして手伝ってもらう、といったことが考えられます。在宅ケアに関しては利用する方も徐々に増えてきています。
心身状況、家族などの環境、収入や資産、そして何より本人の希望などによって、選択は大きく違ってきます。なかなか入りにくい施設もあります。すぐに利用するつもりはない方でも、早めにソーシャルワーカー、ケアマネジャーや福祉担当者に話を聞いておいてはいかがでしょうか。

参考:
  • Friends「仕事に行こう」編(小島賢一)