冊子「Friends」
【血友病体験談】みんなどうした?学校生活〜入学当初

いよいよ入学

幼稚園は具合が悪ければ、休ませられるけど、学校はそうはいかないでしょう?だからとても不安でした。でも、こんな心配を学校にあんまり言うと、普通学級に入れてもらえないんじゃないかと気にしていました。そこで入学が決まってから、病院から血友病の説明冊子をもらって、お医者さんや幼稚園にも電話連絡できるようにお願いして、覚悟を決めて、夫婦で小学校に出向いて説明しました。「幼稚園でも普通にやれました。親が責任を持ちます。何かあれば私が注射をしに行きます。」目一杯、タンカを切って、何とかOK。疲れたけどやってよかったです。(母)

公立小学校では入学時の健康調査票に病名書いて先生と話した。その後、私の仕事の都合で海外で暮らしたが、そこでも同じ。入学時に現地校の校長先生に話し、何の問題もなく受け入れられた。むしろ現地の日本人学校補習校で一部の先生から心配する声があり、初めの頃は昼の休憩時間に親が付き添うことがあった。日本に帰ってから小学校に編入するときも、校長先生に初めに病気のことを話した。後で保健の先生と話があったように思う。(父)

事前に言えなくて、入学後二週間してから言いました。その間はドキドキでした。言ったらびっくりされましたが、現場の先生から校長先生に口ぞえしていただき、そのまま通うことができました。(母)

話を聞いて、担任教諭も管理職も養護教諭の私も随分構えていたので、私がインターネットで探して、血友病に関する資料を入手しました。基本的な事から詳しく分かり易く示してあったので、管理職も熟読していましたし、校内の先生方みんなで勉強させて頂きました。実際、その1年生は本当に元気がよくって勉強も積極的に取り組むし、至って健康そのもので、血友病に対するイメージが覆され驚かされています!はじめは、出血したら血が止まらなくなったり、運動は出来ないし、重度なんてかなり危険なのかと思っていましたから...。私たちは3月程の緊張感はなくなりましたが不安がないと言ったら嘘になります。特に気をつけなくてはいけない事とかあるんでしょうか?起こりうる事故とか。これから何が起きるかわからないので、皆さんに色々教えて欲しいです。(養護教諭)

遠くの小学校に入学前、健康診断に行かされたのを憶えています。きっと、近所の小学校で断わられたんだと思います。入学前に引越しましたから、どちらにも行かなかったんですが・・・。(本人20代)

本当に偶然!入学した小学校の先生に血友病の方がいて、事前に病気を説明しておいたら、その先生が低学年を受け持ってくださったのです。なんてラッキー。(本人20代)

家の目の前の小学校は学区外!学区内の学校までは交通量の多い狭い道路をなんと、40分以上歩かなくてはならないのです。学区内の学校は受け入れますと言ってくれたのですが、越境も考え、学区外の教育委員会に相談すると養護学校を勧められる始末。区内に通わせるか、無理しても越境を考えるか、まだ迷っています。誰か教えて!(後日談→努力の結果、越境が認められたそうです)(母)

教師をしていると教育委員会から校内事故事例、訴訟事例と一緒に注意文書が回って来る。最近になって、それが増えた気がして、どうしても慎重になってしまう。特に学校が荒れていると、たとえ病気を理解し、子どもを受け入れる気持ちは十分あっても、これ以上、子どもを守れないからと断る例も出てしまうかもしれない。(母 & 教諭)

兄が先に入学していたので、先生もなんとなく分かっていたのかもしれません。入学はスムーズに行きました。これって、お兄ちゃんのおしゃべりのせい?(母)

我が家の場合は、比較的、幼稚園と小学校では先生方に恵まれており、心配していたより楽しく過ごせています。入園、入学してから、なるべく早い時期に担任の先生を通じて養護の先生も交えて話をする方が良いと思います。たまたま、校長先生が過去に血友病の男児を担任していた経験があり、さらに安心でした。血友病ということで、あれはできない、これもできないと、させないよりは、後で痛みが伴うかもしれないけれど、経験させた方が良い場合が、学校生活では多いとお話してくださいました。明らかに危険なことは、本人がいくらやりたくても我慢も必要とも。それと、幼稚園や学校では時間が許される限りで、お母さんがクラスの係りや委員を引き受けることをお奨めします。幼稚園、学校へ足を運ぶ機会も増えて、先生と立ち話ができたり、ちょっと子どもたちの普段の様子が見えたりします。今は週2〜3回の予防投与で、大きな怪我もなく元気に1年生を楽しんでいます。(母)

Column1
座談会:保護者の会から(1)

一美(年長): 皆さんは入学の際、学校に説明して何か言われましたか?

千秋(中3): 私は就学時検診の時に、血友病に○をしたら、学校から呼び出しを受けたことがあります。そこで学校に冊子を持参して説明しました。中学の時は担任と体育の先生、保健の先生にしか話しておりせんが、何もございません。

春香(小6、小3): 入学数週間前に親の説明会があって、その時の書類にさらっと書いたら「後ろから集めて前に回して下さい」と言われて他の親にも気付かれて、すぐに校長先生にも知られてしまいました。

冬子(中2、小5): PTAのお母さんや校長先生は直接関係ないし、言う必要ある?

佳夏(小5): 地元の小学校は就学時検診も遅くて、早めに言う機会はなくて、年明けの提出書類の相談希望欄に「ある」と書いて出してみたら、学校に来てくださいって言われ、養護の先生、学年の担任に話しました。そしたらクラス分けも考慮してくれて、それから結構、学校には世話になってます。でも新しい副校長に伝言が伝わってなかったりして、油断は禁物よ。

冬子: うちも、なるべくのんびりしたクラスにしてもらった。前もって先生に相談したら就学時検診には何も書かないでくれって言われちゃって、書かなかった。でも入ってからも別に何もなかった。

千秋: 病気だからといって、今のご時世、すぐに入学は拒否できないでしょう。それならば、私は言わずに心配するよりは、呼び出されても、先生からご質問いただいた方がいいと思いました。養護や担任の先生のご理解が大切だと存じまして、冊子を渡した後、主治医の先生とも連絡をとっていただきました。校長先生もとても安心されたようです。

睦美(高2): 私は高校でも説明しました。私立なんですが、入学手続きが終わってから、薬をおいてもらう件も含めてお願いに行きました。私たちが責任を負いますと言うと「いいですよ」ってあっさり認めてくれました。高校は様々で、試験前には何も身体状況を書かないところもあったし、試験前に問診があった私立もありました。息子の友だち(患者)には養護学校を勧められた人もいたそうです。小学校で何事もなくできる子なら中高でもできるはずです。

千秋: そうね、でも頑張って第一志望に合格して、病気のせいで、万一断られたらって想像すると親としては不安にもなるわ。

ヒロミ(本人20代): 僕の個人的意見ですけど、僕は第一志望でもそんな学校行きたくないです。もしかすると中学からの内申に書かれているかもしれないけど、知り合いには、学校には何も言わず、入学して卒業した奴いますよ。知ってたのは友だち数人ぐらい。

タツオ(本人20代): 俺、友だちにも言わなかった。何か負けたくなかったから。

律男(大3): 確かに中学や高校はあまり説明しなくても大丈夫でしたね。高校には話しましたけど、薬も置いてくれて・・・。妻と一緒に学期毎に交換しに行きました。大学はもう本人任せで“放し飼い”状態です。申し訳ないのですが、結構、男親が出向くと学校も焦って、ちゃんと聞くような印象がありました。たまにはご主人にもご一緒していただくといいですよ。

一美: なるほど、帰ったら言わなくちゃ。

一美: 入学準備しているときに心配になったのですが、決まっている上履きが安いバレーシューズみたいなので、不安です。底はペラペラしているし・・・。

千秋: うちは特別に話して別な上履きをはかせていただきました。他にもいらっしゃるのでは? (春香、冬子、睦美が手を挙げる)

春香: 1800円くらいだと思ったけど、月☆のキャ○ットが良かった。他にも探すと普通の上履き風でかかと柔らかい靴もあるわよ。皆と同じ形でないと嫌がる子どもには、こうしたバレーシューズ型はいいかもしれないね。

佳夏: 我が家は何もしなかったけど、むしろ足首の出血が減っていたので、ぺったんこの方が足首をひねらないのかな、なんて旦那としゃべっていた。

冬子: 中敷にも滑ったりするのもあるし。

ヒロミ: 半年通ってなんでもなければ、“まずはそれで行こう”って感じでいいんじゃない。

Column2
学校には伝えているのか、今昔

これは学校に病気を伝えているかどうか否かについて、
1)荻窪病院で当時の大学卒業までの年齢の患者の調査(2000年実施) 
2)凝固異常症の病態把握に関する研究2002年度QOL報告のデータ抜粋 
3)荻窪病院で当時の高校在学までの年齢の患者の調査(2009年実施)を比較したものですが、
年代間、病院間、地域間で結果に差がありそうです。傾向としては最近になるほど、専門病院に通院しているほど、都市部に居住しているほど、学校に伝えているようですが、はっきりしたことはわかりません。編者の勤務する荻窪病院では近年、すべての方が学校に伝えている様子がわかります。病院の方針として伝えるように指導しているわけではありませんので、特に親御さんの子どもに安心して学校生活を送らせてあげたいという気持ちの現れと考えています。
ちょっと気をつけていただきたい点は、大学の場合、就職活動を始めると通常大学の管理センターで健康診断書を準備してもらいますが、大学側が知った疾病は健康診断書に自動的に記載される例が多いことです。病名を告げて就職するのであればかまいませんが、就職活動の際は注意しておいてください。

参考:
  • Friends「学校に行こう」編(小島賢一)